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6月29日(月)

 先週金曜日に民事再生法の申請をした栗田出版販売に関して出版業界仲間から続々とメールが届く。本の雑誌社は直接取引がなかったもののこれは決して対岸の火事ではなく、いつか身元に延焼する平成の大火だ。

 しかしこのことを考えているとブラックホールに吸い込まれそうになるので、しばし頭から追いやり、スマートニュース社へ。ニュースアプリ「スマートニュース」の「読書チャンネル」へ「WEB本の雑誌」配信の打ち合わせ。

 先日、説明会に参加したものの、理解不能の言葉が連発され、ほうほうの体で逃げ帰ったのだが、やはり電車に乗れば全員がスマホを取り出す時代。こちらもスマホに対応するか、スマホに負けないものを作るか、スマホを使えない人向けに作るか、スマホが絶滅するのを待つかしかないわけで、そのどれも試みなければおそらく5年後はないという決意のもと、再度突撃したのであった。

 しかし私は、以前の私ではない。この間にネット業界の雄であろう川上量生の『鈴木さんにも分かるネットの未来』(岩波新書)を読み、彼らが使う意味不明の言葉がこけおどしであることを知ったのだ。

 もう私を騙すことはできないと「WEB本の雑誌」運営の博報堂の人とともにオフィスに足を踏み入れるやいなや、いきなりガラス張りのキッチンが目に飛び込んでくるではないか。

 えっ?! ここはなに? と出てきた人に問うと、社食のキッチンだそうで、もしかして学校給食みたいに当番制になっているんですか? と再び問いなおすとプロの料理人ですと返ってくる。

 社食がガラス張りのキッチンで、しかもそれがデスクワークしているすぐ近くなのかと驚いていたら、清潔感ある社内はムダなスペースばかりで、無印良品の身体にフィットするソファ(通称ダメ人間製造ソファ)がゴロゴロしているは、天井からはハンモックがぶらさがっているではないか。

 おおおお、すごい。これが会社なのか? 会社であるなら勤めたい。もう「WEB本の雑誌」の配信なんてどうでもいいから私をスマートニュース社に配信させていただけないでしょうかと真剣交渉に移る。

 その後、営業。
 噂の二子玉川、蔦屋家電を訪問するものの、家電があまりに少なく、その代わり本が異様に多く、そして渾然一体となっているカフェの水滴のついたプラスチックカップとともに我々が苦労して作った本や雑誌を一緒に扱うのはとにかくやめてくれという心の叫びを思わずシャウトしてしまいそうになり、すぐさま退散す。いったい何屋さんだったんだろうか。お店というよりは公園に近い。

 一日中もやもやしたものを抱え帰宅。ランニング7キロ。

6月23日(火)

  • ひとりぼっちを笑うな (角川oneテーマ21)
  • 『ひとりぼっちを笑うな (角川oneテーマ21)』
    蛭子 能収
    KADOKAWA/角川書店
    870円(税込)
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「キングダム」の大ブレイクに続き、「アメトーーク!」の読書芸人で紹介された本がバカ売れ。コーナー展開していた書店さんも売れ行きが良すぎて在庫確保が間に合わないらしい。

 テレビという「マス」メディアの力もさることながら、作家・書評家から書店員さんに移ってきた本を紹介する人への信頼感が、ここにきてくりぃむしちゅーの有田絶賛で再ブレイクした『イニシエーション・ラブ』しかり、お笑い芸人に移ったことが興味深い。

 これは自分より目線の上の人から平行に、ついに下へと変化していった瞬間なのではなかろうか......ととある書店員さんに話したら、単に芸人だから紹介が上手いんですよと笑われてしまった。

 どちらにしても好きな人が集まって好きなものの話をしている熱は必ず人に伝わる。面白い本の話をしよう。どんどんしよう。

 夕方、三省堂書店さんで行われていた『蛭子能収のゆるゆる人生相談』刊行記念サイン会に並ぶ。サイン会に並ぶのは西村賢太氏以来。蛭子さんが好きというと、多くの人が半笑いになるかどう対応していいのか困った顔になるけれど、私が今、もっとも共感する人は蛭子能収さんだ。

 それはテレビを見て感じていたのだが、既刊『ひとりぼっちを笑うな』(角川oneテーマ21)を読んで確信に変わり、今作『蛭子能収のゆるゆる人生相談』を読んで不動のものとなった。こんなに自分と近い物の考え方の人がいるのか驚いている。

 というわけで、ひとりひとり丁寧にサインしていく蛭子さんと握手、あまりの緊張に声もかけられず退散。

6月22日(月)

  • 鈴木さんにも分かるネットの未来 (岩波新書)
  • 『鈴木さんにも分かるネットの未来 (岩波新書)』
    川上 量生
    岩波書店
    990円(税込)
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 助っ人の学生に「今、いちばん憧れの人は誰?」と訊ねたら「ドワンゴの川上さんです」と答えが返ってきたので、川上量生『鈴木さんにも分かるネットの未来』(岩波新書)を読みながら出社。興味深い記述多数あり、あちこち付箋を貼り付つつ読み進むも、商売としてはともかく、ネットの世界にはまったく魅力を感じない。鈴木さん(鈴木敏夫:スタジオジブリプロデューサー)はどうなんだろうか。

 荻原魚雷さんの待望の新刊『書生の処世』搬入。

 午前中、某所にて某案件打ち合わせ。
 午後、営業。

 仕事を終えて小宮山書店のガレージセールを覗くと、一際分厚い背表紙が目に飛び込んでくる。心臓の鼓動が一気に早くなる。リーチ一発ツモ!『夢の砦』発見! 

 この本は単行本も文庫も品切れながら、そんなに珍しい本ではない。Amazonのユーズドを調べたら単行本は1円で出品されている。それを注文すれば数日後に手に入るだろうが、しかしそこに喜びはほとんどない。だから私はAmazonで注文することなく、いつかどこかで出会えるだろうと探書リストにいれたところの一発ツモ! この喜びはなにものにも代えがたい。結局、私があんまりネットを面白いと感じないのは、便利の前にこういった喜びが奪われてしまうからだ。3冊500円なので、半村良『葛飾物語』(中央公論社)、北方謙三『明るい街』(集英社)とともに購入。

 帰宅後、ランニング。7キロ。

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6月19日(金)

 40周年記念イベントとその打ち上げを終えて帰宅したのは夜中の0時半。このまま眠ることはできないだろうとランニングシューズに履き替え、国道を目指す。汗を流すためにシャワーを浴びるように、心の穢れを流すためにランニングをする。30分、1時間と走っているとイノセンスになっていく。何かが終わった日、何かが始まった日。卒業。

6月17日(水)

 通勤読書は、『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』のなかで知った『夢の砦』小林信彦や『口笛の歌が聴こえる』嵐山光三郎(ともに新潮文庫)が読みたいのだけれどともに絶版で手に入らず、たまたまボヘミアンズ・ギルドの均一棚で見つけた『私の岩波物語』山本夏彦(文藝春秋)。これが読み出すと衝撃的に面白く、ページをめくる手がとまらない。戦前からの出版社史であり、その語り口は本質を鋭くつく厳しさ。今じゃ大企業のふりをしている出版社の本来の姿があぶり出され痛快。
 とても出社する気になれず、ドトールで朝読。

 10時出社。あちこちにメールを送り、会議の資料を作成。10時半より企画会議。

 13時、明後日金曜日にイベントをする東京堂書店のKさんと「SANKOUEN」で激辛麻婆豆腐定食を食べながら、最終確認。元八重洲ブックセンター勤務であるKさんは、私がアルバイトしていたときの師匠のひとり。これまでもずっとお世話になってきたのだけれど、最も記憶に残っているのは本の雑誌社が神保町に引っ越してきた際に、東京堂書店さんでやっていただいた「本の雑誌社が神保町にやってきた!」フェア。引越し代がでるほどの売上を記録し、大変お世話になったのである。その恩返しが、今回の40周年フェアでできると思うと感無量。

 15時、おじさん三人組の取材で阿佐ヶ谷へ。1時間ほどで終了、浜本と宮里は会社に戻るが、私はそのまま西荻窪の今野書店さんと吉祥寺のブックス・ルーエさんに直納に向かう。

 そのブックス・ルーエさんでキン・シオタニデザインの布製ブックカバーを購入。絶対欲しかったのだ。

 その後、営業、直帰。

DSC_1800.JPG

6月16日(火)

  • 私の体を通り過ぎていった雑誌たち (新潮文庫)
  • 『私の体を通り過ぎていった雑誌たち (新潮文庫)』
    祐三, 坪内
    新潮社
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    honto

 雑誌の勉強をするため坪内祐三さんの『私の体を通り過ぎていった雑誌たち』(新潮文庫)を再読しつつ出社するも、私小説としての面白さについつい目が奪われてしまう。

 今月の新刊第2弾、荻原魚雷著『書生の処世』の見本を持って取次店さん廻り。太洋社さん移転後のコース設定には慣れたものの、いまだ昼食のベストポイントが見つからず。本日も古くから営業している(ように見える)ラーメン屋に飛び込むも、単に古くからやっているだけのようで、半分残す。

 その後、津田沼の丸善さんに直納。会社に戻ってから、エフエムふくやまの電話収録。その間にとてつもない玉稿が届き、感涙。早く本にしたい。

 帰宅後、ランニング7キロ。

6月15日(月)

 昨日の日曜日は、『迷う門には福来る』の先行発売&トークイベントで名古屋日帰り出張。サイン会の立ち会いだけかと思っていたら、なんと著者のひさださんと対談相手という大役を突然振られ、改めて名古屋の恐ろしさを思い知る。

 そうして本日は搬入日。磁場を狂わすひさださんの本だけに、ちゃんと取次店さんに納品できるか心配だったのだが、どうにか無事届けられた様子。ほっ。

 営業。あちこちで辻村深月の『朝が来る』(文藝春秋)が面白いことを吹聴する。新幹線のなかで再読し確信を得たのであるが、もし今年一冊しか本が読めないとしたら、絶対に『朝が来る』を読むべし。

 来週23日に三省堂書店神保町本店で行われる蛭子能収氏のサイン会の予約をする。ついに会える日がやってきた。

6月12日(金)

 創刊40周年記念イベント第一弾である椎名誠前編集長と目黒考二前発行人の公開対談と打ち上げから帰宅したのは0時半。

 質疑応答で目黒さんが「詳しくは来月の『本の雑誌』で書くが、とにかくすごい本です!」と紹介した辻村深月の『朝が来る』(文藝春秋)を読み出したところ、冒頭からまるで胸ぐらをつかまれるかのように物語に引きずり込まれ、そのまま一気読み。安っぽい涙でなく、心の奥底からあふれだす涙を止めることができず、枕カバーを激しく濡らしてしまう。

 カーテンを開けると知らぬうちに夜が明けていた。まさに「朝が来る」だ。

6月11日(木)

 直行で物流倉庫へ。管理不行き届きで30年近く未整理だった改装用のカバーや帯、売上スリップを片っ端から捨てていく。在庫と返品を見ると心がしぼむ。

 しかしシュートを打たなければ絶対ゴールは決まらない。精度を上げていくしかないだろう。

6月10日(水)

 駅前の市民の窓口で印鑑証明をとってから出社。地方・小出版流通センターの情報誌「アクセス」の原稿をOさんに送る。本の雑誌40周年について5枚半。

 そうこうしているうちに「本の雑誌」40周年と1ヶ月号(2015年7月号)が搬入となる。特集は「これからの「本屋」の話をしよう!」。40周年記念号の勢いそのまま売れてくれますように。

 その7月号にご登場いただいた学芸大学の5坪の本屋さん「SUNNY BOY BOOKS」へ納品に伺う。相変わらず5坪とは思えない広がりを持った空間であり、こんなに想像力を刺激されるお店はない。とくに店主のTさんと話していると「本」というものの存在価値をもう一度考えなおしたくなる。感動。「SUNNY BOY BOOKS」で製作、販売している『風の本』を購入し、開店2周年記念誌「SUNNY02」をいただく。

 東横線を営業しつつ、中目黒へ。こちらにある中目黒ブックセンターさんもお気に入りのお店。いたって普通の町の本屋さんなんだけれど、細やかな品揃えと整理の行き届いた店内はいるだけで心地いい。担当のSさんとしばしお話。

6月9日(火)

 4時に起きるはずが、3時に目が覚め、5時30分に娘を修学旅行の集合場所である浦和駅まで送る。

 車のなかでは仲良く話していたのに、駅に着くと赤の他人ですオーラを発して、さよならも言わずに友だちのところへ走って行ってしまった。中学3年生にとって友だちに親を見られるのほど恥ずかしいことはないのだろう。

 降ったりやんだりするなか『迷う門には福来る』の新刊見本提出のため取次店さんを廻る。今月から太洋社さんの新刊を日販さんの新刊口に納品することに。

 夕方、浜本とふたり町田の目黒さんのところを訪ね、上半期ベストテンを決める対談収録。合いの手係で参加するつもりが、本日読み終えた須賀しのぶ『革命前夜』(文藝春秋)があまりに素晴らしかったので、大声で参加。

 21時過ぎ、1都2県離れた地へひとり先に帰る。

6月8日(月)

 RYAN ADAMS「GOLD」を聴きながら出社。今月買ったCDはRYAN ADAMS「ROCK N ROLL」、STEVE MILLER BAND「FLY LIKE AN EAGLE」、JAMES TAYLOR「MUD SLIDE SLIM」、FREE「FREE」の5枚。どれも旧譜なんだけれども、ラジオを聴きながら気に入ったものをチェックしているとこんな感じになってしまうので仕方ない。

 秋葉原から一駅歩いて出社。歩いている間ずっと昨日の我らが興梠のゴールを反復。幸せ。

 しかしこの改悪でしかない2ステージ制&チャンピオンシップのシーズンは何を目標にして応援したらいいのだろうか。

 当然ながら1st優勝のかかっていた昨日の埼玉スタジアムにはまったくその緊張感はなかったし、ヒーローインタビューでは興梠が年間優勝を目標にしていると答えていたが、いったいその年間優勝とは何を指すのか。

 おそらくシーズン通しての勝ち点1位(去年までの優勝)だと思うのだけれど、ならば勝ち点1位のチームの表彰というのはあるのだろうか。このやり方では去年のガンバ戦やこれまでの優勝を決めるような一戦の緊張感がスタジアムを覆うことはないだろう。Jリーグが中途半端なお金のために失ったものがあまりに大きすぎる。

 出社後、「本の雑誌」2015年7月号の部決。7月号は久しぶりの本屋さん特集。電話注文のあった『ミステリ編集道』を丸善丸の内本店さんに直納した後、営業。相変わらず三省堂書店有楽町店さんの棚にはパワーがあふれている。一段と凄味が増しているかもしれない。

 夜、今月の新刊『迷う門には福来る』の初回注文〆作業。帰宅後ランニング6キロ。明日は娘の修学旅行で4時起きなので早く寝る。

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