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1月29日(水)

  • 街の古本屋入門―売るとき、買うときの必読書 (光文社文庫)
  • 『街の古本屋入門―売るとき、買うときの必読書 (光文社文庫)』
    志多 三郎
    光文社
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 靖国通り沿い矢口書店の店頭棚から『街の古本屋入門』志多三郎(光文社文庫)を購入。三百円。さっそく冒頭を読み始めるが、すこぶる面白い。
 
 書店さんは吉野弘祭り。NHKの「クローズアップ現代」で特集されたらしい。

1月28日(火)

 これまでほとんど「再読」という読書をしてこなかったのだけれど、ここ最近は一度読んで面白かったものを改めて読み直すことが増えている。今日の通勤読書も再読。『疒(やまいだれ)の歌』西村賢太(新潮社)。

 初読時も傑作と思ったが、再読してその思いを深める。もし十代のときにこの作品に出会っていたら、椎名誠の『哀愁の街に霧が降るのだ』や村上龍の『69』と並んで青春のバイブルになっていただろう。まるで自分のことを書かれているのではなかろうかというほど男子の恥部をえぐりだされ、持て余すまでに肥大した自己と向き合い、今後の人生に思い悩む。他の小説では絶対味わえないさらけ出しっぷりに心を震わさずにいられない。まさに本書の主人公である貫太が、田中英光の「離魂」を読んで感じた思いと同じ思いを、この『疒(やまいだれ)の歌』に感じるはずだ。

「無論、著者自身の姿をダイレクトに投影した作中主人公の、その文字通りに命がけだった苦闘と、自らの些細な一場の赤っ恥を同列に思えるわけもなかったが、それでもこの私小説家の著作中の一言一句は、そのときの彼の悴けた心に強固な添え木たる用を十全に果たしてくれるものであった」

 息子がその年頃になったらそっと机の上に置いておこう。

 午前中、遅れていた新刊チラシと注文書作りに勤しむ。

 午後は営業。神保町駅へ降りる前にそういえばと思い出し、去年の3月に神保町へ移転されてきた農文協が運営する本屋さん「農文書センター」を初訪問。『猪変』を並べて頂こうと思っての訪問だったのだが、すでにお店の平台では猟にまつわる本の大々的なフェアが開催されており、狩猟専門誌「けもの道」もバックナンバー含めずらりと並んでいた。さすが。しばし棚を徘徊したい思いを押しとどめ、営業。フェアコーナに混ぜて頂けることに。うれしい。

 フットボールチャンネルに原稿が掲載される。

1月27日(月)

 とある書店さんを訪問すると店内は大幅リニューアル中、移動中の本が台車の上にうずたかく積まれていた。空いたスペースに新設されるのはカフェだそうだ。本と相性もいいし、イベントスペースとしても利用でき、なによりカフェの利益率は本と比べ物にならないらしい。いつの間にか雑貨とカフェは本屋さんの三種の神器になっている。

 今日、発表になった2014年の出版物の推定販売金額は過去最大の落ち込み幅前年比4.5%減だとか。確かに去年は世の中の人が突然本や本屋さんの存在を忘れ去ってしまったかのような印象を受けた一年だった。

 消費税率のアップやスマートフォンの普及が原因にあげられるけれど、要するに携帯ゲームやSNSよりも面白くないと言われているのだ。ならばすることはひとつ。それらよりも魅力的な本や雑誌を作るしかない。

1月24日(金)

 営業を終えて会社に戻ると坪内祐三さんから電話。浅野屋で相撲を見るから来ない?というお誘い。白鳳の優勝を見届けながら相撲ファンになったら大変だと気づく。なにせ場所が始まったら15日間連続、休日も平日もお構いなし。しかも取組のほとんどが勤務時間中なのだった。これは水曜夜のJリーグにいかに仕事を抜けだし駆けつけるかなんていうレベルの問題ではない。

 浜本も合流し、浅野屋から放心亭、燭台と神保町ナイト・クルージング。放心亭の料理はどれも美味しかった。

1月16日(金)

  • プラントハンター 命を懸けて花を追う (徳間文庫カレッジ)
  • 『プラントハンター 命を懸けて花を追う (徳間文庫カレッジ)』
    西畠清順
    徳間書店
    836円(税込)
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 朝、中2の娘から本を薦められる。
「これ、面白かったよ。この人の本、みんな面白いよね」
 手には『少年探偵』小路幸也(ポプラ社)が握られていた。おそらくクリスマスにプレゼントした図書カードで買って来たのだろう。
 そして私の本棚を眺め、今日、学校に持っていく本を選んでいた。

 娘に「本を読め」と言ったことはなかった。本なんて読みたくなれば読むだろう。読みたくなければ読まなくたっていい。読んだからってどうなるもんでもない。
 ただこれから生きていく時、誰かといる時間よりもひとりでいる時間のほうがきっと長いだろうから、そういうときに何か暇つぶしになることや気分転換になる方法は教えてあげたかった。
 本、音楽、サッカー。私に教えられるのはそれしかないのだけれど。
 娘に『プラントハンター』西畠清順(徳間文庫カレッジ)を渡してから出社。

 本日は一日社内でデスクワーク。
 夕方、集英社の編集者Iさんが「見本が出来ました!」といって高野秀行さんの待望の新作『恋するソマリア』を届けてくれる。別に私が何かしたわけではないのだけれど、おそらく本ができた喜びを分かち合いたかったのだろう。というわけでちょっとだけ嫉妬しつつ一緒に喜ぶ。

『謎の独立国家ソマリランド』を作ったときの事前営業の話を訊かれたのだけれど、あのときは本の力を信じてほとんど何もしなかった。何かして余計な色が付くのが一番怖かった。とにかく高野さんと話していたのは、本屋さんで見かけたら放っておけない本を作ろうということだった。それはお客さんだけでなく、本屋さんも放っておけない本にしようということだ。それだけ本を信じることができた。信じられる本を作った。

 それはちょうどこの日、すべての手を離れた『猪変』も一緒だ。これだけの本ならば読者に届く。届かないわけがない。そう信じて、夜、入稿した。

1月15日(木)

 秋葉原駅から歩いて出社しているうちに雨。9時30分着。見本出し2日目。末広町へ。T社が移転するまでまったく縁のなかった街だけれど、なんとなく美味しそうなお店が多い。一旦会社に戻ってから営業へ。『たまきはる』神蔵美子(リトル・モア)や『パノララ』柴崎友香(講談社)など、思わず仕事を忘れ、手が伸びる。一軒廻るごとに鞄が重たくなっていく。これではどっちが営業されているのかわからない。いや別にオススメされているとかでなく、勝手に棚へ手が伸びているだけなんだけど。浜本は復活。

1月14日(水)

 9時出社。『果てしのない本の話』の見本ができたので取次店さん廻り。空いているので楽勝かと思いきや、私の前で受け付けしている人が、見本出し初めての様子でいろいろと質問をされている。そろそろ終わるかと思っても、また何か疑問が浮かび、質問を繰り返す。時間はどんどん過ぎていく。初心者に優しくは車の運転と一緒なのだが、見本出しは受付時間に限りがあるため、時間との闘い。絶対に負けられない闘いがそこにはある、のだ。

 背中を溶かす勢いで熱視線を送り、どうにか私の番となる。見本提出後、ダッシュして大通りへ。次なる訪問地の受付終了時間まであと15分と迫っている。もはやバスはあきらめ、やってきたタクシーに飛び乗る。どうにか間に合うだろうと思いきや、タクシーは曲がるべき道を曲がらず、「この辺、不慣れなんですよ」とつぶやかれる。嗚呼。

 道を教え、どうにか目的地手前100メートルの交差点に辿り着いたのが受付終了5分前。その先は混んでいるのでタクシーを降り、アスファルトを蹴る。日頃走っているのは今日の日のためだったのかとゴール前のラストスパートかの如く猛烈ダッシュ。息をきらせて窓口に辿り着き、見本を出し終えたのが受付終了ぴったりの11時30分。勝利。

 その後、地方小出版流通センターさんを訪問し、本日の見本出しを終了。ランチミーティングを約束していた某氏と合流し、市ヶ谷の行列ラーメン店「くるり」に初挑戦。味玉味噌ラーメン。濃厚。

 帰社途中、都営新宿線九段下よりの改札から出たところにある古本屋「山本書店」の均一棚から『喜作新道 ある北アルプス哀史』山本茂実(角川文庫/昭和53年初版/帯あり)を抜く。

「日本アルプスの山々が、まだ荒々しい大自然の掟に支配され、カモシカや熊を追って、命知らずの<鉄砲撃ち>が山奥深くに分け入っていた大正のころーー今はアルプス銀座と呼ばれてにぎわう槍ヶ岳への道を独力で切り拓いた猟師がいた。その名は小林喜作。雷鳥の生き血を飲んで熊の穴に眠り、アルプスの盟主として君臨したこの山の巨人も、ある日ナダレに巻き込まれて謎の死を遂げた......。著者は綿密な取材活動を通じて"人間"喜作とその死の真相を描くことにより、当時の社会のひずみとその底辺に生きる赤裸々な人間の姿を浮き彫りにすることに成功した。推理的手法で描いた第一級の文芸ノンフィクション!」

 100円で購入。このお店の均一棚は相性がいい。

 会社には浜本の姿なく、今日も熱が引かずお休み。やっぱり働かせ過ぎたのかもしれない。
 明日からの通常営業に備え注文書とフェアリストを作成。夜7時、退社。

1月13日(火)

  • Dr. John's Gumbo
  • 『Dr. John's Gumbo』
    Dr. John
    Elektra / Wea
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 朝、一緒に挨拶廻りに出向くはずだった浜本から熱が出たのでお休みさせてくださいとメールが届く。共に行動した岡山出張中にちょっと働かせ過ぎかもと思ったのだが、やはり無理があったか。体力の差というよりは年齢の差。流行りのインフルエンザではなかったようなので一安心。ゆっくり休んでくださいとメールを打ち、ひとり挨拶廻りへ。

 夜、今月の新刊『果てしのない本の話』の初回注文〆作業。この本の出版記念イベントがすでにふたつ決まっている。ひとつは、青山ブックセンター本店にて松浦弥太郎さんとの対談を、もうひとつは初めて出店させていただく「BOOK MARKET」にて。

 帰宅途中、CDショップに立ち寄り、DR.JOHN「GUMBO」を購入。

1月9日(金)

 万歩書店で手に入れた『読むJ‐POP 1945‐2004』田家秀樹(朝日文庫)を読みながら出社。

 机の上は仕事の山、と言いたいところだけれど、今回はパソコンを持参していたので、それほどでもなく、『猪変』のカバーラフがあがってきたので、著者の中国新聞の皆さんに確認いただく。いい感じ。

 その間に一次投票の集計真っ盛りの本屋大賞のメールが実行委員からどしゃどしゃ届きだし、その応対に大わらわになっているところへ、内澤旬子さん来社。せっかく岡山まで行ったので小豆島へ伺いたかったのだけれど、なんと入れ違いで内澤さんは上京。「着せ替えの手帖」の次なる着せ替え候補の浜本より我が服装史をインタビュー。

 インタビューを終え会社に戻ると、あゆみブックス小石川店さんからお店の様子をグラビア掲載させていただいた「本の雑誌」1月号の追加注文が届く。直納後、東武練馬へ。美術書系出版社のフットサルチーム「アルトムント」の初蹴り。

 事務の浜田から「出張明けでバカじゃないですか?」と呆れられたが、サッカーの疲労は日常の疲れを癒してくれるのだ。と思っていたけれどやはり身体にキレはなく、いまいち。今回も芸艸堂のNさんが元気よくゴールを決めていた。

1月8日(木)

「本の雑誌」2月号搬入。特集は「カラーブックス」!

 朝食バイキングを食べ(本日も浜本は山盛り。しかもごはんを「えびめし」と「カレー」と2つ!!)、9時、倉敷店に向かって万歩書店ツアー二日目スタート! それにしても昨日今日と200キロ近く車を運転しているのだけれど、一度足りとも怖い思いをせず、嫌な気分を味わっていない。岡山はとても運転しやすい街だ。

 10時開店と同時に倉敷店に流れ込み、その後、総社店を訪問、「ラーメン国分寺」で昼食をとった後、ついに総本山・岡山本店へ。日下三蔵邸以来の衝撃。

 17時42分のぞみ138号にて帰京。おみやげは、浜本熱烈推薦の「備前名物 大手まんぢゅう」と「中四国限定オタフクソース使用のお好み焼き味 かっぱえびせん」。奇跡的に席が前後だったので、くるりとまわして4人がけにし、座談会収録。

 22時過ぎ、帰宅。
 玄関を開けると猛烈な勢いで息子が駆け寄ってくる。
 おみやげを手渡したらすぐさま同じ勢いで消えていった。

1月7日(水)

 6時半にホテルを飛び出し、日の出前の岡山の街を旅ラン。岡山城に着いた頃、ゆっくりとあたりが明るくなる。予想通り城の周りにランナーの姿が。『ランナーはなぜか城に集まるのか?』という新書の企画を思いつく。思いつくだけ。

 40分ほど走って、ホテルへ戻り、シャワーを浴びて、朝食バイキングへ。思った以上に品数が多く、ランニングをして腹も減っていたので山盛りにもってしまうが、浜本も皿はそれ以上の盛り。「朝はいいんだよ」と何度も言い聞かせている。

 おじさん3号こと宮里とゲストの小山力也さんの到着が11時15分のため、それまでできたばかりのイオンモール岡山を散策。書店は未来屋書店さんが入っているが、文芸書の棚はジャンルごとに小部屋が設けられていた。

 11時15分、予定通り二人が到着。すぐさま岡山が誇る古本屋、万歩書店ツアーを開始すべく駅レンタカーへ。フィットに乗り込み、一路津山へ。こちらの模様は「本の雑誌」4月号(特集:夢の楽園・万歩書店)にて掲載の予定。

 中之町店、津山店、美作店と廻って、20時45分ホテルへ戻る。狩猟本を持って、居酒屋へ行き、座談会。腹いっぱい食べたのに宮里は、どうしても小豆島ラーメンを食べたいと行ってひとり夜の街へ消えていった。

1月6日(火)

 東京駅、7時50分発のぞみ13号に乗車。岡山でさくら553号に乗り換え、12時1分福山着。

 改札で『尾道坂道書店事件簿』の児玉さんと合流し、啓文社ツアースタート。ポートプラザ店、岡山本店、コア福山西店、コア春日店と案内していただく。今回のツアーは浜本も同乗し「本の雑誌」にて「おじさん二人組、わしらも尾道で本と本屋の未来について考えてみた(仮)」と称してレポートする予定なので詳しくはそちらでなのだが、児玉さんが本屋のことを考えるならぜひ見てくれとおっしゃるとおり、啓文社さんはどのお店を見ても素晴らしく、本屋の基本というのが徹底されているように思えた。啓文社さんがあるなら、いつ岡山や福山、尾道に引っ越しても至福の読書ライフがおくれるだろう。

 児玉さんと過ごす時間は、私にとって財産以外のなにものではない。お店を案内していただくとき、そして移動する車中、とにかくいろんなことを質問し続けた。

 22時30分、岡山で戻り三井ガーデンホテルに投宿。夕食が済んでなかったので、昨年「すずらん本屋堂」の取材で来ている浜本の案内で街へ出る。「小豆島ラーメン」を探すが見つからず、リアカーをひく土産売りに訊ね、やっと「豆」の看板を発見。「醤ラーメン」食し、ホテルへ戻り就寝。

1月5日(月)

 仕事始めなので、いつもより1時間早く出社するとコピー機に異常を知らせるランプが点滅しているではないか。休暇前に満タンに紙を補給しておいたのに、もしや注文殺到でそれでも足りなかったのかと興奮したのだが、単なるトナー切れだった。2015年最初の仕事は手を黒く汚しながらのトナー交換。新年あけましておめでとうございます。

 というわけで仕事始めなのだが、前夜2015年本屋大賞一次投票の〆切だったので、それどころではなく、なにはともあれFAX投票の打ち込みをする。そうしているうちに中国新聞の石丸さんより『猪変』の再校のメールが届く。年末年始の間に読んでいただいたことに感謝しながら、朱字を入れ、編集作業としては最終段階に突入。私自身も休暇の間に何度も読みなおしたのだが、本当に面白いルポルタージュで、私にとって2015年は『猪変』の年になるであろうとすでに確信している。

 そうして全員出社したところで、会議。40周年特大号の企画を出しあう。決まるところまではいかず。

 助っ人アルバイトは本日0名。なので引き続き、FAX投票を打ち込んでいると高野秀行さんから電話。神保町にいらっしゃるとのことなので、「グッドモーニングカフェ」へ。もうまもなく2年ぶりの新刊となる『恋するソマリア』(集英社)が発売になるので、楽しみ。

 夜、明日からの出張の準備。いつから出張に行くのにこんなにコード類を持ち歩くようになったのだろうか。浜本と待ち合わせの時間を確認して、帰宅。ランニング6キロ。明日早いので息子と一緒に就寝。

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