朝、出社すると事務の浜田が天井を指さしたまま固まっている。彼女の指さしたその先を見つめると、ポッカリと穴が空いているではないか。
「天井が落ちました」
視線を足元に落とすと、昨日の夜まで天井だった物体が粉々に飛び散っていた。
「どうしてこの会社はこうもいろんなことが起きるんでしょうか」
これは明らかに会社のせいではなくビルのせいだと思うけれど、日本に数千社あるといわれる出版社のうち、朝、出社したら天井が抜け落ちている出版社もそうそうないだろう。
「床じゃなくてよかったですね」
★ ★ ★
とある書店さんで「最近書籍は好調だけど、雑誌はちょっと特集がマニアック過ぎるのか、いつも同じお客さんが買っていくだけで伸びがないですね」と言われる。
数日前、浜田から「最近、定期購読者が増えてるんです」と報告を受け意気揚々としていただけに、その指摘はカウンターブローのように効いた。
雑誌作りは難しい。本当に難しい。いつも買ってくれている読者を満足させつつ、そうでない読者も引き込まなければ部数は増えていかない。そのために最も簡単なことは大衆性のある特集をすることだけれど、それによって元来あるはずの匂いを失っては一番一生懸命読んでくれていた読者を失うことになる。現在の浦和レッズと一緒だ。
ただしかし、雑誌というものは、今月の「本の雑誌」の特集でないけれど、自分たち(作り手)が面白いと思うものを作ればいいのであって、それがたまたまある時期多くの読者を得て商売になったり、ならなかったりするだけのものかもしれない。
帰宅時に「RollingStone」を購入。
佐野元春の一万字インタヴューが収録されているのだ。当然ながら自分の行動にもヒントは隠されている。