« 2014年3月 | 2014年4月 | 2014年5月 »

4月4日(金)

 5月刊行予定の「本の雑誌」別冊『本屋の雑誌』の原稿が続々と届きだす。そのどれもが玉稿で、それぞれ手にした原稿を見せ合い、朝から編集部は大騒ぎ。ピカピカの原稿が届いたときと追加注文の電話が鳴ったときの喜びは、やはり何ものにも変えがたい。

 なお『本屋の雑誌』はこれまで39年の間「本の雑誌」に掲載してきた本屋さんの記事と新原稿を合わせ、全方向から本屋さんの魅力を語る「本屋大全」な大作になる予定。乞うご期待。

 その「本屋の雑誌」の原稿のなかになぜかカレーの話があり、昼は編集の宮里とカレーを食べに行く。しかし13時を過ぎても「キッチン南海」の前は10人以上の行列で、歩いて「まんてん」までいく。それにしてもどうして普通のカレーでなく、揚げ物の乗ったカレーに向かうのかは宮里のたっての希望。

「まんてん」も5人ほど並んでいたのだが、もはや宮里は動かず、その列に並んでカレーを食す。ここのカレーは片手で持てないくらい量が多いので、「少なめ」と注文。宮里はもちろん大盛り。

 夜、美術書出版社のフットサルチーム「アルトムント」の練習に参加。国書刊行会の営業Nさんが「幸手のシュマイケル」と呼ばれながら、ゴールを守っていた。

4月3日(木)

 ここ数日、帰宅すると春休みで暇を持て余している息子が、「人生ゲーム」を広げて待っている。

 ただでさえ「書店を訪問したらどこのお店も担当者不在で一回休み」とか「届くFAXは注文書よりも返品了解書が多くて2万円払う」みたいな日常を送っているので今更人生なんて感じたくないのだけれど、妻は算数の苦手な息子がお金の計算ができるようになると喜んでおり、夕飯をかきこむと娘を交えてルーレットを回すことになる。それにしても「人生ゲーム」を推奨している妻はなぜかゲームに参加せず、因島から取り寄せたデコポンを口に放り込みテレビドラマを見ているのはどういうことだ。

 さて「人生ゲーム」である。これが父親になってやってみるとまったく違うもので、例えば息子がいきなり10を出して、「職業が決まっていなければフリーターとして社会に出る。給料はルーレットをまわし、出た数の1000倍」なんてコマに止まると、「お前、フリーターはやめておけ。どんな会社でもいいから正社員になって安定した給料をもらえるようにしなさい」なんて思わず口走ってしまう。

 それどころか娘がピンク色に塗られた「ストップ! 結婚」のコマに止り、父である私の許しも得ずにいきなり水色の結婚相手を車に乗せたときには、「お前、いったいどんな相手なんだ。いやどんな相手だろうとパパはゆるさないぞ!」と詰めより、娘から思い切りうざがられた。

 そうこうしているうちに孫が生まれ、おお、それは可愛いもんだ、ジジって呼んでいいんだよほれ小遣いあげようなんてそりゃあもう忙しくて自分の人生どころでない。

 いつの間には私の手元には約束手形が貯まり、ダントツのビリ。それでも娘や息子は「宇宙飛行士」になったり「石油王」になったりして着々と財産を増やし、幸せに暮らしているようなので、いつか私に援助してくれるだろうと思っていたのだが、終盤になってもお金は一切くれず、それどころか家も買えない私を笑い、同居も許してくれないのであった。

 ところがゲームの最終盤、私がいち早くゴールして待っているとふたりとも「夢のテーマパーク設立に投資する。$300000はらう」のコマに止まり、一気に財産を減らしてしまうではないか。おお、お前らの人生はどうなるのかと考えていると、なんと最後はルーレットをまわして宝くじに挑戦とかいって、くるくる回したら「7」が出て、私は一気に億万長者になってしまった。

 人生コツコツ生きたってしょうがない。やっぱり一発逆転だ!

 娘と息子にこんこんと説教し、パパの遺産をあてにしてもダメだぞ、パパはサッカーチームを買ってチャンピオンズリーグで優勝するんだと騒いでいると、ビリになった息子は涙を溜めて妻の元に走り、娘は自分の部屋へ去っていってしまう。

 父親になっても「人生ゲーム」をかたすのは、相変わらずめんどくさかった。

4月2日(水)

 出来上がったばかりの『本屋大賞2014』の見本を持って、取次店さんをまわる。
 発表は来週4月8日(火)だけれど、本屋大賞を始めてからこの見本出しの日が私にとっての一年の区切りになっている。市ヶ谷の桜を見ながら、11年の月日を想う。

 営業後、直帰して差別横断幕事件以来初のホーム開催となる埼玉スタジアムへ。

 いつもならスタジアムを真っ赤に染めるはずの横断幕や旗はなく、またコールリーダーも太鼓も「おい!そろそろ行こうか」もなかった。唯一残された声と手で必死に応援するも、リズムは崩れ、コールも散漫になってしまう。まるで炭酸の抜けたコーラのようだと想いながらそれでも必死に声をあげていると、浦和レッズユース上がりの18歳関根貴大がまるでメッシのようなドリブルで大宮アルディージャの左サイドを翻弄。いつの間にか眉間のシワはなくなり、自然と笑みが広がってくる。まるで2009年に同じく埼玉スタジアムで原口元気や山田直輝、永田拓也、西澤代志也といった若手が活躍、6対2で大勝し、希望に沸いたナビスコカップのようだ。

 もしこの試合が以前のような熱狂のなかで行われていたら......。
 背負ってしまった十字架の重さを噛み締めながらスタジアムを後にする。

4月1日(火)

 新年度。
 いつ頃からか日記を書くのが苦しくなっている。特記事項なしという日々が続いているというか、何を書いていいのかわからなくなっている。TwitterやFacebookがいけないのかもしれない。本も読むもののなかなか読み切れず、気づけばラジオばかり聴いている。それでも今日から毎日書こうと決意する。エイプリル・フールになりそうだけれど。

 というわけで営業とも出版ともまったく関係ないが、今や日記で書きたいことナンバー1のケーキ作りである。
 報告し忘れていたが、スポンジケーキ、シュークリーム、ガトーショコラの後、シフォンケーキに挑戦し、大成功をおさめたのである。

 いや初回は失敗し、型から取り出した瞬間まるで雪崩が起きたかのように決壊し、無惨な姿になったのであった。

IMG_5306.JPG

IMG_5311.JPG

 それでも妻や娘は美味しいと言ってくれたのだが、とても売り物になるような状況でなく、第2のバイブルである『決定版 小嶋ルミのケーキ・レッスン』(柴田書店)を熟読し、問題点を洗い出した。

1)メレンゲの強度
2)燃焼の加減
3)完全な冷まし

 それらに注意しながら翌日曜日に再挑戦すると、シフォンケーキは入道雲のように膨らみ、口に入れると綿菓子がごとくほのかな甘みを残して消えていった。

IMG_5315.JPG

IMG_5319.JPG


 それは信じられないくらい美味しかった。実を言うと家族全員だれもシフォンケーキというものを食べたことがなくこれが成功なのかわからない。それでも美味しいのだからいいのだ。

『捨てる女』をブックファースト新宿店さんに直納後、高野秀行さんと辺境ドトールにて打ち合わせ。『謎の独立国家ソマリランド』で第35回講談社ノンフィクション賞、第3回梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞したものの、高野さんの実力はまだまだこんなものではないはずと、「高野秀行"第2期"10カ年計画『ムベンベノイカ』」というレポートを提出。

 会社に戻って、夜遅くまで『本屋大賞2014』の初回注文〆作業をする。

« 2014年3月 | 2014年4月 | 2014年5月 »