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3月26日(月)

  • 夢をかなえるサッカーノート
  • 『夢をかなえるサッカーノート』
    中村 俊輔
    文藝春秋
    1,572円(税込)
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  • SEIBIDO SHUPPAN(セイビドウ シュッパン) サッカー スコアブック 9124
  • 『SEIBIDO SHUPPAN(セイビドウ シュッパン) サッカー スコアブック 9124』
    SEIBIDO SHUPPAN(セイビドウ シュッパン)
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  • レッキング・ボール(初回生産限定盤)
  • 『レッキング・ボール(初回生産限定盤)』
    ブルース・スプリングスティーン
    SMJ
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 出版したばかりの今柊二著『定食と古本』の売れ行きがよく、注文のあった書店さんへ直納に向かう。いまだコートを手放せない寒さのなか十号通り商店街を歩いていると、背後から自転車にぶつかられてしまった。

 たいした痛みではなかったのだが、ぶつかった場所がふくらはぎで、その感触があまりにサッカーのときにディフェンダーから蹴られるものに似ており、条件反射でPKをもらうおうと、大きな声をあげ、ダイビングしてしまう。

 しかしもちろん私が両手をあげてファールをアピールしても、十号通り商店街には審判はおらず笛はならない。笛はならないどころか、自転車を運転していたおじさんは、あまりに私のアクションが大きかったため、よほどの被害だろうと血相を変えて自転車を降りてくるではないか。

「だ、大丈夫ですかっ? びょ、病院に行きますかっ?」

 確かに痛いんだけど、それは自転車がぶつかったふくらはぎでなく、ダイビングしたときについた手のひらであった。アスファルトの後がくっきりつき、小石が突き刺さり、じんわり血が出ている。

「あっ、手が...」
「手? 足は大丈夫ですか?」
「足?!」

 そうか、私は足を痛がらなければならなかったのだ。でも痛くないし、足は無傷と言っても過言ではない。過言ではないどころか、間違いなく過言だ。だから病院なんて当然必要ない。私が欲しかったのは救急車のサイレンではなく、PKを示す笛の音だったんだけど、ここは残念ながらグラウンドではなかった。

 どなたか私にシミュレーションの反則をとって、レッドカードを突きつけ、即刻退場させてくれないだろうか。

「だ、大丈夫です、自転車の運転、気をつけて下さいね」と半笑いで伝え、私は十号通り商店街をおじさんが見えなくなるまで足を引きずって歩いた。

★   ★   ★

 神保町を訪問すると、まもなくリニューアルをオープンを迎える東京堂書店さんの扉が開いていたので思わず中を覗き込む。居心地の良い本屋さんになりそうだ。その後、半蔵門線に乗って渋谷へ。春休みの若者でごった返していたけれど、昔は毎日こんな感じだったような気がする。

★   ★   ★

 BRUCE SPRINGSTEENN「WRECKING BALL」と中村俊輔『夢をかなえるサッカーノート』(文藝春秋)、『サッカースコアーブック』成美堂スポーツ出版を買って帰る。

 8キロラン&体幹トレーニング中級コース。

3月23日(金)

  • 日本全国津々うりゃうりゃ
  • 『日本全国津々うりゃうりゃ』
    宮田 珠己
    廣済堂出版
    1,650円(税込)
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 新堂冬樹の作風に「白新堂」と「黒新堂」があるように、宮田珠己の作風にも「金色」と「銀色」がある。

 デビュー作『旅の理不尽』(ちくま文庫)やロングセラーとなった『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)などギャグ路線は「金色の宮田珠己」略して「キンタマ」系と呼ばれ、『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)や『だいたい四国八十八ケ所』(本の雑誌社)など、独特な興味によってひとつのものを追求するエンタメ・ノンフ路線「銀色の宮田珠己」は「ギンタマ」系と呼ばれている。

 そしてここ数年「キンタマ」系はもう書けないと「ギンタマ」系で勝負してきた宮田珠己なのであるが、ついにその「キンタマ」パワーの封印を解き、世に出したのが『日本全国津々うりゃうりゃ』(廣済堂出版)である。

 宮田珠己が勝手に注目する日本各地の(観光)スポットを旅するエッセイなのであるが、その恐るべしキンタマ・パワーは電車のなかで読めないどころか、家でも読めない。

 私は家族団らんのこたつのなかで読んでいたのであるが、あまりのおかしさに、腹が捩れ、震えが止まらず、しまいにはのたうちまわってコタツをひっくり返してしまったほどだ。床に転がるみかんを拾いながら妻や子から散々怒られてしまったので、出来ることなら鍵のかかる部屋かトイレで読むべし。

 特に最終章の「真実の書」は、もはやギャグの域を超えて、金色に輝く聖書のようで、つまらない悩みどころか、生きていることすら忘れてしまうエッセイである。2012年どころか、人生必読のキンタマ系の1冊。

3月16日(金)

 WEB白水社で連載している「蹴球暮らし」第24回:卒団大会(2)を更新。

 早起きして、埼玉スタジアムへ。明日のホーム開幕を前に自由席の入場順を決める前日抽選。あまりの寒さに震えながらしばし待ち、くじを引いたらびっくり仰天の好番号。こんなところで運を使わず、明日の浦和レッズに運が向きますように。

 家に帰っても震えが止まらず、しばしストーブの前で暖をとる。そうこうしているうちに遅刻の時間となり、泣く泣く出社。取次店さんに送っていたデータが文字化けしていると連絡あり、様々な手を尽くすがダメ。最後の最後で、事務の浜田のWindowsPCから送るとなぜか読めるようになり、ほっとひと息。『定食と古本』の部決。注文書一枚作成。

 銀座・教文館さんを訪問する。階段踊り場のフェアはいつ見ても面白い。今いちばん好きな本屋さんのひとつだ。しばしお休みされていたYさんが出社されていたので、しばしお話。その後、もう一軒大好きな本屋さんである山下書店東銀座店さんを訪問。こういうお店が地元にあったら、もう何もいらないという感じだ。

 そしていつの間にか店名が変わっていたのが「INAXブックギャラリー」で、3月1日から「LIXILブックギャラリー」になっていた。中身は変わらないので営業するわけでなく、棚を眺める。

 その後訪れた書店さんで、「もう7月の直木賞は決まりですよ!」と貫井徳郎さんの『新月譚』(文藝春秋)を薦められるが、それは4月に出る新刊だそうで、その書店員さんは「別冊文藝春秋」連載中に読んでいて、あまりの面白さに確信したらしい。

 そう言われてもまだ出ていない本は読めないのであった。悔しい。

3月15日(木)

『紙の月』を読んですっかり角田光代ブームになってしまったので、『口紅のとき』(求龍堂)を読む。
 これ、銀座の資生堂で行われた展覧会に飾られた写真に角田さんが小説を書き下ろされたもので、1編は原稿用紙にして4〜5枚しかない。それなのに、これがものすごい物語を生み出していて、改めて角田光代の実力を思い知る。

 おそらく私は今後の人生で何度もこの短い小説を思い出し、読み直すことだろう。

 早川書房じゃ仕事納めの日しか許されらないらしい、私服で出社。一日中会社にこもって書店さん向けダイレクトメールと注文書の作成。美しい注文書ができたときはなんだかそれだけで注文が取れそうな気がしてくるから不思議だ。

 帰宅後、強風のなか8キロRUN。

3月14日(水)

  • 出稼ぎ哀歌―河辺育三写真集
  • 『出稼ぎ哀歌―河辺育三写真集』
    河辺 育三
    ブックショップマイタウン
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 直行で取次店さん廻り。今月の新刊『定食と古本』今柊二著の見本出し。しかもその間に別の用事があったりして、朝9時半から夕方5時まで様々な人と会い、しゃべくりどおし。話題もサッカーの話からジュンク堂書店新宿店の本当は売りたかった本フェアの話、そして除染までと様々で、よくよく考えてみると営業マンとは特殊な仕事なのかもしれない。

 ちなみにジュンク堂書店のフェアでは『出稼ぎ哀歌』河辺育三写真(ブックショップ)があっという間に売れてしまったそうだ。

 通勤読書は、『刑務所なう。』堀江貴文(文藝春秋)。あのホリエモンの獄中日記なのだが(しかもまだ服役中)、これがすこぶる面白い。何よりも毎日の食事が妙に美味そうで、思わず私も刑務所に入ってみたいと思ってしまったほどだ。花輪和一の傑作漫画『刑務所の中』(講談社漫画文庫)を楽しめた人は、必読。

3月13日(火)

『紙の月』角田光代(角川春樹事務所)があまりに面白く、久しぶりに出社をあきらめ、笹塚駅前のエクセルシオールカフェへ。傑作!

 どこか生活に不満を抱いていた専業主婦が、アルバイトをし出し、自分のお金を手に入れられるようになったところから始まる転落劇。しかしこれを転落と言えるのか私にはわからない。大なり小なり人間はお金に振り回されて生きていくわけで、ではどのようにお金と付き合うのが正解なのか、おそらく答えはないのであろう。そして同じ逃走劇でも『八日目の蝉』とは小説の構造が異なるあたりがにくい。

 ちなみにPR誌「ラインティエ」のホームページでは、その角田光代のインタビューが読めるようになっている。

 営業後、『定食と古本』の事前注文締め作業。帰宅したのち、8キロRUN。

3月12日(月)

『本の雑誌』2012年4月号搬入。早川書房特集。

 ジュンク堂書店新宿店さんから「お向かいの紀伊國屋書店さんと比べると『本の雑誌』が届くタイミングが一日遅い」と言われたのは、オープンしてすぐのことだった。取次店さんの関係でどうしてもその差を埋めることができなかったので、納品だけ直接することにし、紀伊國屋書店さんに並ぶ時間に合わせて、毎号私か助っ人が両手に「本の雑誌」を抱えて納品していた。

 それもこれも今回が最後かと思うと感慨深い。テナントの問題とはいえ、こんな素敵な書店を閉店させてしまっていいのだろうか。そしてこの閉店は、書店史上最大の閉店になるのではなかろうか。その返品に耐えられるか、出版社。

 直納の後、西武園競輪へ。
 大竹聡さんの連載『ギャンブル酒放浪記』の取材。
 私はギャンブルにも酒にもまったく興味がないのだが、仕事だから仕方ない。今日も秩父下しかなんだか知らないけれど猛烈な寒風吹きすさぶなか、9人の男がまたがる自転車になぜかお金を賭ける。こんなにつらい取材はない。ふふふ。

3月7日(水)

 朝、通勤電車のなかで昨夜から読み始めた角田光代の新作『紙の月』(角川春樹事務所)をカバンから取り出そうと思ったら、ないのである。確かに入れたはずなのにとたいして大きくもないカバンをくまなく探すが影も形もない。

 入っているのは営業のお供「森永ミルクキャラメル」と注文より多く手にするポケットティッシュだけで、こんな日にかぎっていつも3冊はカバンに詰めている本が、『紙の月』があまりに面白すぎるので他に必要ないと判断し入っていない。まさに「活字中毒者地獄の通勤電車」である。もしかしたらとカバンに顔を突っ込んでみるが、やはり本は1冊も入っていない。

 ああ、『八日目の蝉』に継ぐ、逃避行物語『紙の月』はあまりに面白く、朝ごはんのあいだも読んでいたというのに......。

 しかし私は絶対カバンにいれたのだ。いれたはずなのだ。それがどうしてないのだろうか。

(1)昨夜、本屋大賞の会議で帰宅したのが12時過ぎ。寝不足で朦朧しており、本当はカバンに入れ忘れた。
(2)毎晩遅い私に妻が怒って、私がトイレに入っている隙にカバンから本を抜いてしまった。
(3)本厄だから

 うーむ。一番可能性が高いのは(3)の本厄のような気がする。

 本厄だもの。よしつぐ。

3月6日(火)

 訪問するお店、訪問するお店、公休だったり、休憩で書店員さんに会えず、悪夢の一日。
 そして夜、遅くまで本屋大賞の会議。さすがにちょっとくたびれる。

 北上次郎さんが次号「本の雑誌」4月号で早くも今年度ベスト1と断言する『晴天の迷いクジラ』窪美澄(新潮社)読了。私もクジラを見に行くか。

3月5日(月)

  • ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)
  • 『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争 (講談社文庫)』
    高木 徹
    講談社
    681円(税込)
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  • ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図
  • 『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』
    NHK ETV特集取材班
    講談社
    1,599円(税込)
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 木村元彦さんのユーゴ流れで、今さらながら読んだ『ドキュメント 戦争広告代理店』高木徹(講談社文庫)がすこぶる面白かった。

 元々NHKスペシャルの番組だったようだが、バルカン紛争でなぜセルビアだけが悪者にされたのか、その影でじつはボスニアと契約し暗躍していたアメリカのPR会社の実態が、まるで映画のように語られていく。民衆とまったく違う経済で動く、恐るべき世界の構造が胸に迫るが、よくよく考えてみると、今売れる本も結局露出の多さだったりして、そしてその裏で様々な動きがないわけでもなく、世の中の真実というものが何だかまったくわからないのであった。

 NHKスペシャルといえば、昨年の震災以後、食い入るように見た番組が書籍化された。『ホットスポット ネットワークでつくる放射能汚染地図』NHK ETV特集取材班(講談社)で、国が公表しなかった実態を、専門家とともに地道に調べたドキュメントである。取材、放映をめぐってのNHK内部でのやりとりや、組織を離れ飛び込んでいく科学者の矜持など、まさに誇りにあふれた一冊だ。

 午前中、三省堂書店さんを訪問し、もろもろ打ち合わせ。
 その後、あちこち営業。1月以降、どこのお店も売上が相当悪い。そんなもののせいにするなと言われそうだが、寒波と雪と雨のせいではないかとお天道様を呪いたくなる。

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