アナタハ カミヲ シンジマスカ?
私は39年と11ヶ月22日信じていなかったが、今日から信じることにした。
神は意外と近いところにいた。埼玉スタジアムで私の隣に座っていたのだ。
神の名前はモリカワマモル。平日は、庶民のふりをしてクリーニング店を営んでおり、40歳になったというのにいまだカタカナが書けない。だから彼のお店のお得様カードやタグはすべてひらがなかで記されている。ちなみにそんな彼が学んだ高校は私と一緒である。
しかしモリカワマモルは、土曜日の夜や日曜日だけ神になるらしい。
なぜなら、我が浦和レッズは2011年シーズンが始まって以来、5勝5敗9分けという最悪の成績のなのであるが、その5勝はすべて彼が埼玉スタジアムに降臨したときだった。
この夜、前半11分にゴールキーパーが退場するというまさかの展開になったのであるが、なんと2点を奪って勝利。その帰り道、愚痴ロードにて「俺、まだ今年一度も負けてないんだよね、というか勝ったところしか見たことがないんだけど」とつぶやき、神であることが判明したのである。
そのまま埼玉スタジアムの地中深くに埋めるべく、ただいま神を捕獲している。ちょっと暴れているので困っているのだが、J1死守のために神を逃すわけにはいかない。
朝、埼玉スタジアムに前日抽選が始まるまで、携帯椅子に座って9月刊予定の『下町酒場ぶらりぶらり』大竹聡著のゲラを読む。営業も編集もどこでも仕事ができるのがいいところ。しかし朝、6時から無性に酒が飲みたくなるのは問題だ。
その勢いをかりて、文庫化された『せんべろ探偵が行く』中島らも+小森純(集英社文庫)を読む。らもさんとその周りのひとたちが、安くて気持ちいい酒場を探して歩く対談エッセイ集だが、そのらもさんの雰囲気にやられてしまう。中島らもは、本を読みだした頃、夢中になって読んでいたのだが、この存在感はやはりたまらない。そして今、こういう人がいなくなってしまったことが哀しい。
それにしてもここでイラストを書き、一緒にせんべろ探偵化している長谷川義史が、あの『だじゃれ日本一周』の長谷川義史だったとは。「情熱大陸」でも素敵だったな。
ただいま東京で一番活気のある街、というか再開発で人出がどっと増えた印象の二子玉川を訪問。二子玉川ライズには文教堂がオープンし、反対側の高島屋にはもともと紀伊國屋書店があり、そして駅中にはブックファーストがある。書店の担当者さんにはお会いできなかったのだが、街中にはオシャレなベビーカーを押すママさんがあふれている。そういう人たちの聖地になっているようだ。
二子玉川の文教堂と同時期、どちらも震災直後のオープンだったあおい書店池尻大橋店も訪問。住所も確かめずに伺ってしまったのだが、駅直結のビルだった。
その後「本の雑誌」2011年8月特大号で「小沢書店」フェアの原稿をいただいた流水書房青山店の秋葉さんを訪問。なんだか次号「en-taxi」では坪内祐三さんと対談されているとか。「恐れおおくて誌面が見れません...」と謙遜していたが、小沢書店のフェアは今月いっぱいの終了とのこと。
フェアにしても棚にしても、本屋さんという場所は、まるで舞台のように、その瞬間瞬間の生き物なのだ。そこで本と出会えるか出会えないかはまさに運であり、そこにこそ、本屋巡りの面白さが詰まっていると思う。
浜本、宮里、私で、川崎の図書館へ取材。
「本の雑誌」で「おじさん三人組」なんていう意味のわからないユニットを組まされ、毎号どこかに行かされているのだが、これが結構大変なのだ。
昼から夕方にかけて取材し、その後帰社。
酒とつまみ社だったらおそらく帰りに、川崎の串揚げ屋や有楽町の「ロックフィッシュ」に寄っているのだろうが、真面目な浜本の口から「いっぱい飲んでいくか?」の言葉は聞かれなかった。
まあ16時から飲める会社も酒とつまみ社以外そうそうないだろうが...。
会社に戻って「ガリガリ君梨味」食す。
小石川のA書店さんを訪問し、私同様、女子サッカーのコーチをしているKさんと、なでしこ優勝を喜び合う。心の底から女子サッカーの普及と発展を願う。
夜、助っ人の鈴木先輩が来たので、定期購読者用封入紙「本のちらし」の実験結果を聞く。今号では、日焼け止めクリームで本の日焼けは止められるか?を挑戦したのである。
「南極しろくま」食す。
ハワイに行っていた浜本が台風を連れて帰り、くもり時々豪雨というめまぐるしい空模様。
そんななか今月の新刊『山の帰り道』沢野ひとし著が搬入となる。搬入日は雨。もはや本の雑誌社の定説だ。
営業に出かけず、新刊チラシと書店向けダイレクトメールの作成に勤しんでいると、明後日21日で閉店となる茗渓堂さんから奇跡の追加注文が届く。直納しておいた『山の帰り道』が売り切れてしまったというのだ。あわてて再度納品に伺う。
これが36年間で最後の納品になるかもしれない。
通勤読書は、永江朗さんの『そうだ、京都に住もう』(京阪神エルマガジン社)。
茶室を持ちたいと思ったところから、一ヶ月のうち10日を京都に住もうと考えた永江朗さん。いろんな人に出会い町家を手に入れ、リノベーションしていく姿を追った永江版ビフォアーアフターか。永江さんの建築ものといえば、自宅(ガエハウス)の建築を描いた『狭くて小さいたのしい家』(原書房)もあるのだが、こちらの京都版は、食事や散歩のことも書かれており、京都のガイドブックにもなっているのがミソか。
そういえば太田和彦さんも『ひとり飲む、京都』(マガジンハウス)で、夏と冬、京都に一週間泊まって、居酒屋やバーを堪能する本を出している。京都はそんな魅力的な場所なのだろうか。
私は、別に京都でなく、浦和の駅前に部屋を借りたい。
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大竹聡さんの『下町酒場ぶらりぶらり』のゲラが出来てきたので連絡をとると、「おお、今日はこれから雑誌『酒とつまみ』の搬入日なのよ」と言うではないか。季刊を目指しておきながらよもやここ数号は年1冊しかでない有様で、その搬入日にたまたま電話をかけてしまうというのは365分の1の確率だ。スロットマシーンなら「777」である。
というわけで縁を大事にするのが営業マンということで、急遽、浅草橋の酒つまビルに搬入を手伝いに行く。扉を開けると発行人兼編集長の渡邉さんとカメラマンの斉藤さん、そして助っ人らしいおじさん1名、遅れてやってきたのが大竹さんで、どうも私を含めて5名で「酒とつまみ」14号を搬入するらしい。
35度を越える猛暑のなか、渡邉さんは車が止まるを音がすると「あっ来たかな?」と何度も4階の窓を開け下を覗くが、「酒とつまみ」14号はなかなか届かなかった。じりじりとする編集部であるが、ええーいこのたった30分ぐらい待つのがどうしたもんかい。あんたらの雑誌を何ヶ月も待っている読者に比べたらなんでもないやい!と叫びそうになったところに、トラックが到着。
するともっと嬉しそうにするかと思っていた酒つまメンバーは突然暗い顔になり、まるでどこかに島に島流しにされる囚人のような顔をして階下に降りていくのであった。その背後について階段を降りていって気づいたのだが、その階段は狭くて急な上、なんと道路から3回まで数千冊の「酒とつまみ」を運びこむというではないか。本の雑誌社の9段の階段どころではない。50段以上の階段である。しかも直雑誌なので、刷った分のほとんどがここに納品されてくるわけだ。「取次店を通しなさい!」思わず私は階段を降りながら叫んでいた。
その搬入はまさに地獄で、私はもくもくとトラックから3階まで運んでいたのだが、酒つまメンバーは途中からなぜか3階の倉庫から出て来なくなり、そこで運びまれた「酒とつまみ」をいかにもきれいに積み直しているフリをしながら、クーラーをつけて休んでいるのであった。sしかも最終的にはあまりに適当に積んでいるため数が数えられず、製本所の人に嫌な顔をされているではないか。
結局、「酒とつまみ」14号の70%は私と助っ人のおじさんふたりで運んだと言っても過言、どころか正解である。
まあそうはいっても無事にできたのは嬉しいことであり、よかったよかったと編集部に持ってき、本の雑誌社であればここから助っ人学生をつかって一気に定期購読者の封入作業が始まったり、書店さんに直納に向かうのだが、一向にその気配がない。
「このページ最高だね」「斉藤さんやっぱり面白いよ」なんて言っているだけで、まったく何も進まない。しばらく経って、発行人の渡邉さんが「じゃあそろそろやりますか」というので、てっきり作業が始まるのかと思ったら、冷蔵庫から缶ビールを取り出し、一同で乾杯するのであった。
それでその後どうしたか?
なんと何もせず、銀座の立ち飲みバー「ロックフィッシュ」に向かい、しこたま飲んだのである。
それでおしまい。大丈夫なんだろうか、この人たち。
発行人の浜本が夏休みでハワイに行っており、なんだか社内は気の抜けた空気が流れ、いつもなら遅くまでいる浜田も松村も定時でさっさと上がっていくのであった。
気づいたら編集部の宮里と私だけになっており、そういえば宮里も入社して1年以上が経ち、いろいろ不満を抱えていたりする頃だろう。こんなときこそ中間管理職の私がガス抜きしてやらなければならないと、酒に誘ってみたのであった。
実は私、会社に人間と酒を飲むのが嫌いである。なぜなら会社を出た瞬間に仕事のことを忘れたいというのが第一、そして第二に元来のカラマレ体質が社内酒で発揮されると面倒くさいのである。事務の浜田なんか酒を飲むたびにからんで来て「あんたいつも偉そうに言っているけどさ」なんて言いながら、口で開けたビールの王冠をピュッと飛ばしてくるのである。
だからほとんど会社の人間と酒を飲みに行くこともなく、また宮里と二人で酒を飲むのも始めてのことである。宮里はふたつ返事で「いいっすね」と答え、パソコンの電源を切ると、二人で十号通りを歩き、「男の台所おやじ」の暖簾をくぐったのであった。
さーて、誘ったのは私であるから、ここは私が勘定を持たなければいけない。宮里はかなりの酒飲みと聞いているので、ビールなんて薄い酒を飲ませていてはいけないと、すぐ焼酎のボトルを入れたのであった。「飲め、飲め、大いに飲め」と言いつつ、ほとんど割らずに氷だけ浮かべて焼酎を宮里に差し出すと、「いいっすね」と口をすぼめてキューッと喉を鳴らした。
しばらくそうやって飲んでいたのだが、一向に宮里の愚痴は始まらない。始まらないどころか、つまみにのばす箸とグラスはしゅっちゅう空になり、私は彼の焼酎を用意するのに忙しい。そうして気づいたら、ボトルが空いているではないか。
「もう1本、行きますか?」
笑う宮里の腕を引っ張り、私はお勘定をお願いしたのであった。
「本の雑誌」2011年8月号搬入。
上半期ベストに、「本の雑誌」誌上初の地図の特集である。事務の浜田が、「どうして世界中の人が本の雑誌を読んでいないんでしょうか!」とガリガリ君を片手に、憤るほど面白いのでぜひ。
その浜田が真剣な顔をして「杉江さんは営業中に酒を飲んだりしないんですか?」と訊いてくるのであった。「営業中に酒? 飲むわけないだろう」と答えると「偉いですね」と褒められる。まさかこんなことで褒められる日が来ようとは。
「私だったらこんな暑い日の外にいて、しかも街には飲み屋さんがたくさんあるんですから、絶対キューッと生ビールを飲んじゃいますよ」
酒が飲めるのとこの暑さのなか外回りにでるのは彼女にとってどちらが上だろうか。そろそろ営業マンと事務員の人事異動の季節か。
増床された津田沼の丸善を訪問し、そのあまりの大きさに驚く。売り場面積でいえばもっと大きいお店もあるけれど、奥行きがすごいのだ。しかもその増床の割合以上に在庫量もボリュームアップされており、学参やコミックの棚は、まるで遠近法のようであった。
文芸担当のTさんに話を伺うとやはりまとめ買いされていくお客さんが増えているそうで、客単価は相当上がっているとか。
その後、ときわ書房船橋本店を覗くと、『青の6号(上下)』小沢さとるが多面展開されており、「すごいですね」と担当のUさんに話を伺うと大変売れているとか。別の「機動戦士ガンダム」など<サンライズ・ロボット漫画コレクション>も勢いがいいらしい。
もちろん得意のミステリーも新宿鮫の最新刊『絆回廊』大沢在昌(光文社)が絶好調で、なんと東野圭吾の最新刊『真夏の方程式』(文藝春秋)よりも調子がいいとか。うーん、活気のあるお店の訪問はやはり楽しい。
夜、なぜかJ2チームのサポーターふたりに挟まれて、京成立石へ。鶏の丸揚げともつ焼きなどを食しつつ、「杉江さんも来年は仲間ですよ」と骨をしゃぶりながら言ってくるのであった。
昨夜は、今月21日でお店を閉めることになった御茶ノ水の茗渓堂・坂本克彦さんと、浜本、浜田と同席のうえ、遅くまで酒を飲んだ。
本の雑誌社と茗渓堂の付き合いは、それこそ創刊号を500部刷り、訳もわからず目黒考二が営業に出かけたところからはじまるわけで、とても私が何かを語ることはできない。おそらく目黒さんか坂本さんと親しい沢野さんか、あるいは入社以来お世話になっている浜本がどこかで書くだろう。
今回は家庭の事情での閉店であり、坂本さんも「落ち着いたらまた本当に好きな本を並べた本屋をやりたい」と話していたので、そのオープンを待とうと思う。
埼玉を営業するが、ことごとく担当者さんがお休みだったり、休憩中だったりで、空振り三振の山。こんな日もあるさと慰めつつ、直帰してランニング。
山ガールの(と呼ぶと奥歯を鳴らしながら怒る)事務の浜田が、「筋肉痛じゃないんですか?」と顔を合わすなり聞いてくる。
「筋肉痛? なんで?」
「いや山登りしたらなるかと」
ふふふ。山登りなんていったって所詮坂道を歩いているわけで、もはや三年近く週40キロ走っている私の筋肉にダメージを残すほどでもないのである。山ボーイの前に、私のことをアスリートと呼んでくれと鼻で笑っていると、「明日来ますよ、年だから」と負け惜しみを言って、給湯室に消えていった。
通勤読書は芥川賞受賞後第一作品集『寒灯』(新潮社)。西村賢太氏自身と思われる主人公・貫太とその彼女・秋恵のシリーズ最新作。この『寒灯』では、貫太と秋恵が同居をはじめるところから別離まで順を追って収録されているので、まるで一編の長編小説のようにも読める。
それにしても本来なら隠しておきたいような人間の負の感情や些細な気持ちのゆれを、これでもかというほど描く様はいっそう磨きがかかっており、そういったマイナスの感情を掛け算することによってプラスに転嫁させ、笑いを生む能力はもっともっと評価されてもいいのではないか。私は「腐泥の果実」で、ビフテキをとんかつにさせるやりとりに思わず吹き出し、腹を抱えて笑ってしまった。
西村賢太氏つながりでいうと「週刊文春」の坪内祐三さんの「文庫本を狙え!」で『根津権現裏』が取り上げられていた。事務の浜田が給湯室から顔を出し、「すごい良い書評ですよね」と興奮していた。
営業は柏方面へ。ホットスポットを特集した「AERA」が、文字通り飛ぶように売れているそうだ。胸が痛い。
通勤読書は、『我が家の問題』奥田英朗(集英社)。
『家日和』(集英社文庫)に続く、家族小説短篇集なのだが相変わらず「亭主が会社のお荷物だと心配する妻」とか「新婚なのに家に帰りたくない夫」とか微妙に外した設定がうまい。私は最後の奥さんがランニングに夢中になる「友だち夫婦」で涙があふれてしまったが、その涙は決してイヤな涙ではなかった。
先に読了し、同じように涙した発行人の浜本と僕らはなぜ重松清は読まなくなったのに奥田英朗は読み続けているのか、話し合う。
新宿の紀伊國屋書店本店さんに『記憶のちぎれ雲』を直納した後、中央線を営業する。が、途中で頭が痛くなりダウン。熱中症だ。
会社にもどって水分を補給し、濡れタオルで首筋を冷やしていると経理の小林が心配して塩飴をくれる。「杉江さんのまわりは温度が違う」と驚いていたが、私はどうやら畜熱・放熱しているらしい。
だいぶ回復したので、夜、錦糸町の中華料理屋ではらだみずきさんと角川書店の編集者と会食。『サッカーボーイズ14歳』の文庫に解説を書いたお礼らしいが、はらださんは私の担当作家でもあり別にお礼もなにもないのである。
角川書店の編集者が「えっ! 営業ひとりなんですか? えっ! 本も作っているんですか。えっ! 本の雑誌の企画も出しているんですか」と再三驚いていたのが印象に残る。大きな会社では考えられないことなんだろう。これ以上驚かすと顎が外れそうなので本を出しているのは秘密にしておいた。
編集部の宮里の机のまわりをうろついていると、なんだか素敵なゲラが出ているではないか。了解を得てペラペラめくってみると、それは8月発売予定の浅生ハルミンさんの『3時のわたし』であった。
この本は、昨年一年間、浅生ハルミンさんが午後3時に何をしていたかをエッセイとイラストで記していただいているのだが、これがもうめちゃくちゃ可愛い上に、文章におかしさがあって、最高なのであった。早く本になって欲しいぞと宮里を脅して営業にでかける。
「南極しろくま」食す。
暑さによる疲労はボディブローのように効いてきて、水曜日の午後あたりから膝が上がらなくなる。また次のお店に向かうために乗車した電車やバスでは、クーラーから吹き出す心地よい冷気に当たるとあっという間に寝てしまう。
本日も「六本木駅前」から乗車したバスで寝てしまい、はっと顔をあげたら降りるべき停留所「青山学院前」だった。突然降りだした雨のなか、小走りで青山ブックセンターに駆け込み、担当のTさんとお話。
するとちょうど話題にあがっていた、ただいま大注目のひとり出版社・夏葉社の島田潤一郎さんが現われる。
「本の雑誌」2011年4月号でご登場いただいていたが、私は初対面だったので名刺交換。島田さんは「いやあ杉江さんがこんな優しそうな方だったとは。ブログを読んでいると......」と第一印象を語りだす。
よく言われることなのだが、どうもこの日記は偉そうらしく、私は190センチを超える大男のうえ、マッチョで格闘家らしいのだ。
その実態は宮田珠己氏に「自他ともに認める根っからの営業体質で、絶えず誰かにウソくさい話をしていないと衰弱して死んでしまうと」書かれているような口先だけの営業マンであり、また『おやじがき』(にんげん出版)など人間観察鋭い内澤旬子氏曰く「ミシマ社の三島さんは根っからのいい人だけど杉江さんは顔が邪悪だから」らしい。
ひとつ言えるのは、私はピカピカに磨きあげられた鏡のような人間で、私に優しさをみた人は自身も優しく、邪悪をみた人は心の奥底に邪悪をかっているのであろう。
いやそんなことはどうでもよく公表している日記が悪印象を与えているのは、営業として問題なのではなかろうか。それもこれも「炎」なんてタイトルを付けているのと一人称「私」や文体の影響だろう。というわけで本日からタイトルを冷やし、文体も今やダントツ人気のオネエ風でいくことにした。
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疲れるのよ、真夏の営業って。でも社長は働けっていうし、仕方なく外に出るんだけど、こう暑くちゃガリガリ君は売れてもなかなか本は売れないわけ。売れなきゃ注文取れないし、最悪よ、最悪。
仕方ないから自分で本を買おうと思って帰りに新宿のブックファーストに寄ったの。リニューアルでちょっとコンパクトになってるんだけど使い勝手はよくなったわよね。買ったのはこの3冊よ。
『絵でみる江戸の町とくらし図鑑』江戸人文研究会編、善養寺ススム【イラスト】(廣済堂出版)
『日本のお守り』畑野栄三(池田書店)
『なずな』堀江敏幸(集英社)
こう暑いとね、文章を読む気力がなくなっちゃうのよ。だからもうパラパラ見て素敵な本を2冊選んだの。
『絵でみる江戸の町とくらし図鑑』は、そのタイトルどおり、江戸の町や暮らしのをカラーイラスト満載で紹介されている本なんだけど、これがめっちゃカワイイイラストで、しかも詳細なのよ。見ているだけでワクワクしてくるような本で、図鑑って言っても新書サイズだから、時代小説を読みながらペラペラするのにちょうどいいのよね。そういえば最近図鑑がきてない?
それとね、もう1冊見た瞬間にキュンと来たのが『日本のお守り』。日本中のお守りが写真と文章で紹介されているんだけど、その写真がね、誰だと思う? 浅田政志と石川直樹なのよ。これはもう買うっきゃないでしょう。
ただね、副題の「神さまとご利益がわかる」は邪魔よね。そうでもしないと営業会議を通らなかったのかもしれないけど、これはもう『日本のお守り』だけで十分だし、民俗学の本としても立派よ。そうそうブックファーストもきちんと民族学の棚に並んでいたわよ。偉いわね。
でもねもっと偉かったのは昨日行ったリブロ吉祥寺店で、これ多面展開してしかも「写真は浅田政志と石川直樹!」ってPOPも立っていたのよ。それを見なかったら私は本の存在も、写真の謂れもわからなかったもの。えっ? だったらリブロ吉祥寺店で買えって? だって昨日は給料日前でお金なかったんだから仕方ないじゃない。
それと最後のね『なずな』は、そのリブロ吉祥寺店のYさんから「今年一番!」ってお薦めされたの。アタシとYさんはものすごく読書の趣味が合うから信頼しているのよ。どこかで誰かが「イクメン小説」なんて安易な言葉で紹介していたから、絶対読まない!と思ったけど、Yさんが言うなら買いよね。
今日はね、「南極しろくま」と「ガリガリ君梨味」食べたわ。じゃあまた来てね。待ってるわよ。
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ちなみに夏葉社の新刊は、上林曉傑作小説集『星を撒いた街』だ。