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10月22日(金)

  • 散歩の達人 2010年 11月号 [雑誌]
  • 『散歩の達人 2010年 11月号 [雑誌]』
    交通新聞社
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「散歩の達人」編集部は、大丈夫だろうか。

「炎の浦和レッズ応援記」を連載しているのに、特集で「東横線」を取り上げ、しかもそのなかで「フロンターレと共にある『川崎愛』」なんて記事を載せているのだ。

 むむむ、こんなところでJリーグサポーターを戦わせてどうする。
 というか、ただでさえ浮いている我がページを、完全なアウェーに追い込んでどうする。そういえば連載1回目も、FC東京のお膝元「調布・府中・深大寺」の特集だった。まさか鹿島の特集はないだろうが、もしや私から連載をやめさせてくれというのを待っているのだろうか。

 確か事務の浜田から、「散歩の達人」の編集長が「杉江さんのページにクレームがきてる」とつぶやいていたとうれしそうに報告されたっけ。

 負けるもんか。

★   ★   ★

「おすすめ文庫王国」の企画用にB書店のHさんのところへPOPを取りに行く。
 伝説のPOPの数々に思わず感動。うまく誌面に載せたい。

10月21日(木)

  • 貧困の文化―メキシコの“五つの家族” (ちくま学芸文庫)
  • 『貧困の文化―メキシコの“五つの家族” (ちくま学芸文庫)』
    オスカー ルイス,Lewis,Oscar,智博, 高山,勝, 宮本,臣道, 染谷
    筑摩書房
    27,712円(税込)
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  • 隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)
  • 『隣のアボリジニ 小さな町に暮らす先住民 (ちくま文庫)』
    上橋 菜穂子
    筑摩書房
    770円(税込)
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 中央線を営業す。

 中野のA書店のベテラン書店員Oさんから、「創刊の頃から応援しているだから頑張れよ!」と様々なアドバイスを頂く。背筋が伸びる想い。

 夜、吉野朔実さんと穂村弘さんの対談がある吉祥寺へ。

 ブックスルーエにて、70周年記念復刊となった『貧困の文化 メキシコの<五つの家族>』オスカー・ルイス(ちくま学芸文庫)を購入。この本は「作家の読書道」で上橋菜穂子さんが薦めていて、ずーっと欲しかったのだ。

 その上橋菜穂子さんの文化人類学作品『隣のアポリジニ 小さな町に暮らす先住民』(ちくま文庫)もつい先月待望の文庫化で、もちろん即買い即読の1冊だ。IMG_0535.JPG

 本を買っていると担当のHさんから「いつも変化球のPOPばかり書いて来ましたけど、たまには直球のPOPをと思って山田詠美の『マグネット』(幻冬舎文庫)にPOPを立てたらすごい勢いで売れているんですよ」と売り場を案内される。確かに「電車で号泣しちゃいました」なんてHさんらしくないけれど、そのストレートな気持ちが伝わったんだろう。
 
 リブロでのイベントはどうにか無事終了。
 次のイベントは、宮田珠己さんと中野俊成さんの「巨大仏なう」、そしてその次は本の雑誌社初の試みである読書会「本の雑誌読書部」だ。テキスト読み直さないと。



10月20日(水)

 辰巳ヨシヒロさんの『劇画暮らし』搬入となる。

 私は正直に白状すると辰巳さんも劇画もまったく関心がなかったのだが、担当編集の宮潤からゲラを渡され、その厚さにビビりながら読みだしたら、あっという間の一気読み。こんな面白い本を本の雑誌社から出せてうれしい。

 編集の宮潤が作る本は面白い。
 だから私は営業として、宮潤が作る本を一生懸命売りたい。

 なんだか気持ち悪いが、そんなことを最近思いながら書店を回っている。

10月19日(火)

 お気に入りの本屋さんである行徳の山下書店を訪問する。

「自分の趣味に走らず、お客さんの欲しいものを並べています」とF店長さんが話されるとおり、バランスよく本が並べられており、まさに町の本屋さんだ。こういうお店がある町の住民は幸せだと思う。

 先日訪問した清澄白河に新しくできた「古本・新刊洋書・雑貨」のしまぶっくでW店長さんが、100円均一ワゴンを指さしながら話されていたことを思い出す。

「会社の帰りにさ、あそこをふらっと見て、なんか本が見つけれられた幸せだよね。5分でも10分でもそういう時間があるって」

 本当にそのとおりだと思う。
 会社の帰りにふらっと寄れる、ちょっとした非日常の空間。本屋さんだったり古本屋さんだったり、あるいは喫茶店だったり。

 その夜お会いした町の本屋さんの代表格・往来堂のOさんは、支店を出したりはしないんですか? という私の質問にこんな風に答えた。

「お店を良くしようと努力すればするほど、その町のお客さんとお店を作ることになるんですよ。そうするとね、チェーン展開とはまったく逆の発想になるんですよ」

10月18日(月)

 とある書店さんを訪問すると、私の前に年配の同業営業マンがいて、書店員さんに声をかけているところだった。

「いつもお世話になっています。◯◯出版ですが、××書のご担当の方いらっしゃいますでしょうか?」

 それはもっともふつうな声をかけ方だったが、声をかけた相手がそのジャンルの担当者だったらしく「担当は私ですが」と返事をしたあと、忙しそうに新刊を並べ続けていた。

 年配の営業マンは、手に持った新刊案内を渡そうとしているのだが、書店員さんは気にかける様子もなく、自分の仕事をしている。よくある光景なのだが、私は先週末会った、父親との会話を思い出していた。それは父親の知人が、会社で管理部門から営業に回され、長年勤めた会社を辞めてしまったという話だった。

「自分からやめるように仕向けるリストラだよ。ずっと社内で働いていた人に、営業なんてできるわけないんだ」

 その言葉を聞いて私は思わずそんなことないよと反論しようと思ったが、言葉を飲み込んだ。確かに営業は苦しいかもしれない。でも......。

 結局、その年配の営業マンは、無視された格好のまま、新刊案内を渡せずにお店を後にした。

 書店さんにとって必要な営業マンは、おそらく売れている本を出している出版社の営業マンとこれから売れそうな本を出す営業マンなのだ。

 それ以外の営業マンは仕事の邪魔でしかなく、まあ本当にそのとおりなんだけれど、だからこそ邪魔にならないように何か情報を持って行きたいと考えている。

 自社の本がなかなか売れないのなら、他社の本で売れている本を紹介したり、ほかのお店の面白いフェアなど、ベストセラーを作れないなら、そうやって自分に付加価値をつけ、少しづつ関係性を深めていくしかないだろう。

 そういう私だって、先程背中を丸めて去っていった営業マンと変わらない日々を過ごしているのだが。

 いつか売れる本を出すぞ! そう思いながら、サッカーのビデオを見たり、本を読んだり、あるいは子どもと遊んで必死に毎晩気分転換している。気分転換に失敗したら、私も父親の友だちのように営業をやめているかもしれない。

10月17日(日)

 5時半起床。ランニング12キロ。
「プロフェッショナル」松本人志を見る。松ちゃんが、やけに恥ずかしそうだ。

 朝食は、昨夜の残りのビーフシチューとサラダ。豆乳、野菜ジュース。

 週に一度の楽しみ角上魚類、ヤオフジに買い物。2店ともものすごく活気があって、物を買う喜びに溢れている。

 そのまま車を走らせ、ショッピングモール「イオンモール川口キャラ」へ。息子に一度だけトランスフォームのカードゲームをやらせてやる。

 帰ってきて昼食。うどんとサラダ。

 14時、岩槻のフットサルコートへ。本日はコーチをさぼって、自分のサッカー。絶不調。

 16時半、公園に子どもたちと連れて行き、娘と一時間サッカーの練習。帰りは、娘、息子とも走って帰らせる。

 シャワーを浴びて、作っておいたコロッケとカキを缶チューハイ片手に揚げる。うまうま。娘はご飯を3杯食べていた。

 食後、息子と「もやもやさまーず」を見ていたのを覚えているのだが、気付いたら朝だった。

 私の休日に夜はないのだ。

10月16日(土)

 6時半起床。
 柔軟体操の後、ランニング。桜並木の葉がフワフワと風に流され飛んで行く。雲が美しい。12キロ。

 朝食はご飯、卵焼き、納豆。
 9時、娘を助手席に乗せ、グラウンドへ。12時まで小4~小1のチームのコーチ。

 12時30分帰宅。冷蔵庫にあったやきそばを作る。3人前作っても娘と息子であっという間に平らげてしまう。仕方なく蕎麦を茹で、サラダと食事。

 パートから戻ってきた妻にチャーハンを作って出すと、すぐさま用意して埼玉スタジアムへ。
 15時キックオフ。一気飲み干した缶チューハイと心地よい陽気と疲れのせいか眠くてしかたない。
 2対0でセレッソ大阪に勝利。これで10戦負けなし。

 18時帰宅。風呂に入って、みんなでテーブルを囲んで食事。昨晩から似ておいたビーフシチューの肉がとろける。

 高野秀行さんとかとうちあきさんの「野宿」イベントに行かなければいけないのだが、もはや私の身体は小人に全身しばりつけられたように重い。「青空レストラン」を見るのが精一杯で、テレビ欄で気になった「プロフェッショナル」の松本人志は、娘に声をかけ録画予約しておいてもらう。

 19時15分、就寝。

10月15日(金)

  • 恐れるな!  なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21)
  • 『恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか? (角川oneテーマ21)』
    イビチャ・オシム
    角川書店(角川グループパブリッシング)
    796円(税込)
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    honto
 目覚めたら4時。あと2時間は眠れるのに、浦和レッズの自由席観戦前日抽選の日は、どこか緊張があり、いつも時間より早くめが覚めてしまう。

 二度寝し、6時に起床。寝ぼけ眼で車を走らせ埼玉スタジアムへ。雨は止んでいたが屋根になるコンコースの下に並んでくじを引く。番号をY社長に携帯メールで知らせる。

 家に戻ったのが7時半。学校に向かう娘とすれ違う。
「朝っぱらからどこいってんのよ」
「すいません.........」

 朝食は、バナナ、野菜ジュース、豆乳、コーヒー。息子が食べていたポケモンの「クリームクロワッサン」があまりにうまそうだったので半分食べる。「あとで返してね」と息子。

 通勤読書は『恐れるな! なぜ日本はベスト16で終わったのか?』イビチャ・オシム(角川oneテーマ21)。

 数日前の日記でワールドカップイヤーだというのに面白サッカー本が出ないとを嘆いたが、待望のサッカー本がこの本だったのかも。あの退屈で情けないW杯南アフリカ大会をこれだけ公平にきちんと批評した本(雑誌)はどこを探してもないだろう。

 サッカーはシステムだけのものでも戦術だけのものでもなくまた監督のものでもないのだ。例えばヒーローのように扱われた本田に対してもオシムはきちんと評価を下す。「本田は唯一リスキーにプレイした」「ヘディングを改善せねばならないし、両足でプレーできないことと視野の狭さも改善しなければならない」

 いつだかスポーツ雑誌の編集者から「相変わらず野球本で売れるのはノムさん、サッカー本はオシム」と話しを聞いたことがあるが、それも仕方ないことだ。高度の知識と何をも恐れず批評精神あふれる本を書けるのが、その二人しかいないのだから。

 9時半出社。
 ゲラが出来たので、はらだみずきさんと内澤旬子さんにメールで送信。

 昼食は隣のファミリーマートで買ってきた、焼きそばと5種類豆の野菜サラダ。
 各出版社のPR誌を読みながら食す。

「巨大仏なう」のイベント用書籍が足りなくなったとの連絡を受け、三省堂書店成城店へ『スットコランド日記』と『スットコランド日記深煎り』を直納。あまりの重さに昨日に引き続きカートを使う。

 打ち合わせの後、本日オープンのジュンク堂書店吉祥寺店に向かう。
 16時過ぎ着。テナント全体が本日オープンなのでものすごい人ごみで、ジュンク堂のレジにも行列ができていた。新店でこんなに混んでいるお店を見るのも久しぶり。近隣どころか沿線への影響を考えてしまう。

 会社に戻ってイベント情報の確認でリブロ吉祥寺店に電話。出版社カンゼンのTさんに電話し、来年出版予定の本の営業の相談。

 新潮社のNさんから『ふがいない僕は空を見た』窪美澄のPOPに推薦コメントを使わせて欲しいと連絡あり。了解す。社内でしばし雑談。今月号で終わってしまう『彷書月刊』についてなど。

 今日こそは早く帰ろうという決意のもと、19時に会社を出る。
 ブックファースト渋谷店に寄り、娘に頼まれていた本を3冊購入した後、文芸書売り場をうろついていると声を書けられる。河出書房新社の営業マンSさんだった。最近お会いしていないと思ったら、取次店担当に異動なられたとのこと。寂しい。

 一番欲しかった坪内祐三さんが「週刊文春」の「文庫本を探せ」で紹介していた『海炭市叙景』佐藤泰志(小学館文庫)がどうしても見つからない。そりゃああの書評を読んだら欲しくなるというもの。三省堂か紀伊國屋あるいはジュンク堂に行くか悩むが、ここは大穴、「週刊文春」と一番通そうなブックファーストルミネ2店へ。運良く1冊残っており、購入。

 ここまで来たらタワーレコードにも行こうとフラッグスへ。OSHMAN'Sでスニーカーを見た後、タワレコへ。
 ニック・ホーンビィが歌詞を書いたBen Folds「LONELY AVENUE」と池袋のHMVで視聴してから気になっていたRORY GALLAGHER「LIVE IN EUROPE」を購入。

 21時30分、帰宅。
 シャワーを浴びて晩飯。さんまと肉豆腐。
 来週のプレミアリーグ5試合と浦和レッズ対セレッソ大阪戦の録画予約した後、翌日のビーフシチューを作り、シャトルシェフの保温鍋に入れておく。『海炭市叙景』を読み出す。就寝は24時15分。

10月14日(木)

 6時起床。ランニング5キロ。

 シャワー浴びた後、バナナがなかったのでぶどう、野菜ジュース、豆乳、コーヒーの朝食。「ぶどう、ぼくの分も残しておいて」と息子。妻のパートが早出だったので、その息子を幼稚園のバス停となっている駐車場へ連れて行く。

 9時半に会社に着くと、用意しておいた『劇画暮らし』の見本を持ってすぐ取次店廻りに。368ページ440グラム。14冊で約6キロ。あまりに重いのでカートに乗せて行く。

 お茶の水のN社で東京創元社の営業マンOさんと会う。隣にキレイな女の子を連れているので何かと思ったら新入社員だそうで名刺交換させていただく。私はずっとひとりなのに、私よりおそらく10歳は年下のOさんにはもう部下がいる。

 飯田橋に移動し、T社のKさんに見本を差し出すと、「杉江さんに紹介したい人がいるんですよ」と仕入れ窓口に座っている別の担当者さんのところに連れて行かれる。あわてて名刺を出すと、Mさんは「『本の雑誌』愛読しているです」とうれしいお言葉を頂戴する。しかもこちらの炎の営業日誌も愛読していただいているようで、私が確認した実在する読者13人目。ありがとうございます。

 O社、TA社と見本出しを終え、昼食は月に一度のお楽しみ、神楽坂・黒兵衛でミソ野菜チャーシューメン。堪能。

 ブックスサカイ深夜プラス1はもうない。

 市ヶ谷へ移動し、地方小出版流通センターへ。渋谷の丸善&ジュンク堂に納品に向かう間際のKさんを捕まえ、新刊搬入の打ち合わせ。

 会社に戻ると「本の雑誌」連載のはらだみずきさん、内澤旬子さんから原稿が届いていた。面白すぎて社内で回し読み。

 書店さんからの電話注文を受けると「スコットランド日記」と言われ、「スットコ」なんですが大丈夫でしょうか? と確認する。紛らわしいタイトルを付けたのはこちらなのだが、勘違いされた注文が多いのだ。

「スコットランドの話ではないんでしょうか?」「スットコランドの話なんです」。

 書店さんは目の前にいるお客さんに確認している様子で、やっぱり「スコットランド」の本が欲しかったらしく、注文はキャンセル。スコットランドの本を作れば売れるのかな?

 18時45分、会社を出て赤坂見附へ。19時半より本屋大賞の会議。第8回のスケジュールを決めるが、予想外のところで大いに盛り上がる。終わったのが21時半。こういうことを毎月、もう8年もやっているのか。

 家に着くと23時。
 当然、家族は皆就寝。風呂に入って、マッサージ、アイシングしながら柔軟体操。晩飯は、昨日食べはぐったおでんと息子が穫ってきたサツマイモの天ぷら。

 録っておいたトットナムVSアストン・ヴィラを観戦。昨シーズン4位に入り、CL出場権を手に入れたスパーズ。注目の新加入のファン・デル・ファールトは、大活躍の2ゴール。二枚目のベントリーはどうした?

 就寝は1時半。
 

10月13日(水)

  • 馬鹿者のすべて 1 (ヤングジャンプコミックス)
  • 『馬鹿者のすべて 1 (ヤングジャンプコミックス)』
    村岡 ユウ
    集英社
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  • 白銀ジャック (実業之日本社文庫)
  • 『白銀ジャック (実業之日本社文庫)』
    東野 圭吾
    実業之日本社
    713円(税込)
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 6時半起床。
「あー学校面倒くさい」という小4の娘に「平日があるから休日が楽しいんでしょ」と諭すと「パパ本気で言ってる?」とファイナルアンサーを迫られる。「うそです」「あー良かった」。

 朝食は前日とまったく一緒のバナナ、野菜ジュース、豆乳、コーヒー。

 通勤読書は『日本サッカー現場検証』杉山茂樹(じっぴコンパクト新書)。全編に渡って「W杯前から本田のゼロトップを推奨していたぼくってすごいでしょ。岡田サンもしかして僕の言うこと聞いてた?」という、今どき個人のブログでもなかなかお目にかかれない自意識が書かれていて気持ち悪い。まあ杉山茂樹の本だから仕方ないか。それにしてもワールドカップイヤーだというのに面白サッカー本が出ないのが嘆かわしい。通勤音楽がAudioslave「Out Of Exile」。

 9時に出社。滞っていた企画と『おすすめ文庫王国』関連でメールを多数送信しつつ、『劇画暮らし』の初回注文〆作業の準備。12時半に会社を出て、昼飯は10号通りの松屋で牛めし小盛りと生野菜。

 中井の伊野尾書店に週末の『野宿入門』かとうちあき(草思社)発売記念「本屋野宿トークショー」のイベント用の書籍『放っておいても明日は来る』を直納。外にはまるでプロレスの興行のようにポスターが貼られていたが、いったいこの路上でどんなトークが繰り広げられるか。高野さんは無事に帰れるのだろうか。

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 伊野尾さんからススメられ『馬鹿者のすべて(1)』村岡ユウ(ヤングジャンプコミックス)を購入。「杉江さん、絶対好きですよ!」と目力満タンで言われたが、これは伊野尾さんのバイブル『宮本から君へ』新井英樹著の系譜を継ぐ漫画だ。不公平のなかでいかに生きるか、そして不公平はいつか解消されるのか。続きが気になるのであった。

 大江戸線で六本木へ。あおい書店のFさんはお見かけできず、青山ブックセンターへ。Mさんといきなり文庫で発売された東野圭吾の『白銀ジャック』(実業之日本社文庫)を指さしながら「もう本はみんな文庫なるのかな......」と話しあう。そんな青山ブックセンターでは古川日出男さんとCoyote編集部がセレクトした本のフェアが行われていた。推薦文は書き下ろしらしい。
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 16時に会社に戻ると20日発売の新刊『劇画暮らし』辰巳ヨシヒロの見本が届いていたので、すりすり。「本の雑誌」の増刷編集者・宮潤こと宮里潤が、大好きな辰巳さんの本を作ったわけだが、これが藤子不二雄「まんが道」とはまた違った漫画史になっていて、とても面白いのであった。漫画漫画とついひとくくりにしちゃうけど、漫画もそれぞれ異なった表現方法で書かれているのだ。

 初回注文の締め作業を終え、17時半に会社を出、北千住へ。
 今夜は東京堂書店のKさん、Hさん、Sさんと飲み会。お店はなんと太田和彦さんの『居酒屋百名山』にも登場する「大はし」。有名は「牛にこみ」があまりにうまくほっぺたが落ちそうになるが、私以外のメンバーは本日お休みで17時から酒を飲んでおり、もはや追いつくどころではない。

 入社したばかりのKさん、そして書肆アクセスから移って3年目のHさん、生粋の東京堂小町のSさんとそれぞれ社歴はまったく違うが、キンミヤの焼酎を前に、これからお店をいかに一段とよくしていくか本気の議論をしており、羨ましいというか、カッコいいというか、胸が震えて涙が止まらないのであった。

 21時にお開きとなり(なにせ私以外はその時点で4時間飲んでいるのだ!)、私は我がソウルトレイン・東武伊勢崎線に乗って帰宅。危うく実家に帰りそうになったが、新越谷で乗り換える。

 22時帰宅。すでに家族は就寝。風呂に入って、柔軟体操。
 録画しておいたチェルシー対アーセナルを見る。お互い超ハイレベルながら志向のまったく違うサッカーを展開。面白すぎる。みんなバルセロナだ、モウリーニョのレアルマドリードだと騒いでいるが、今年のチェルシーは相当強いと思う。1時就寝。

10月12日(火)

 6時半起床。朝ごはんは、バナナ、ヨーグルト、豆乳、野菜ジュース、コーヒ。平日は常にこれ。7時半、娘と一緒に家を出る。娘は通学班の待ち合わせ場所に、私は自転車で駅へ。通勤読書は、『原稿零枚日記』小川洋子(集英社)。再読だが、小川洋子の「小説」を読む幸せを噛み締める。この現実からふっと飛躍する幻想の世界がたまらない。通勤音楽は、佐野元春「The Circle」。なぜか小川洋子を読むと佐野元春が聴きたくなる。

 9時、会社に着く。すでに「本の雑誌」11月号が積まれたトラックが停まっており、先に来ていた浜田とともに運び込もうとすると、経理の小林、発行人の浜本と続々と出社してきて、全員で運び込む。搬入日なのに珍しく雨が降らないと喜んでいたら、事務の浜田が「ギャー」と叫び声を上げる。

 なんと助っ人アルバイトが一人もいないとか。これから定期購読者向けに「本の雑誌」を郵送袋にツメツメしなきゃいけないというのに。というわけで、社員全員、ひとまず自分の仕事を投げ出し、ツメツメ作業へ。私は11時のオープンを待って、ジュンク堂書店新宿店へ納品に向かう。

 トンボ帰りで会社に戻りツメツメ作業。私は「本のちらし」を挿し込む係なのだが、工場の息子なので単純作業が好き。昼飯は駅前の京王のパン屋「ルパ」で買ったソーセージパンとたまごパンと野菜サラダ。つい余計に買ってしまったクリームパンを浜田に進呈。

 15時半、ツメツメ作業無事終了。コーヒーを淹れなおし、滞っていた自分の仕事に戻る。宮田珠己さんと中野俊成さんの公開対談「巨大仏なう」の件で三省堂書店成城店のUさんにメールなどした後、時間があまりに中途半端なので、営業に出るのを諦め、12月の新刊(『おすすめ文庫王国』)のチラシや書店向けDM作成に勤しむ。19時半終了。自宅で書いておいた「炎の営業日誌」を3本アップ。

 帰る前に、文化放送「くにまるジャパン」に出ていた発行人浜本茂と雑談。小4の息子が野球とサッカーをやっているが、どうも気持ちがサッカーに傾きつつあるとか。サッカーをやらせなさい、浦和レッズを見に来なさいと進言。

 帰宅途中、浦和レッズサポ仲間のブックサービスのY社長に携帯からメール。最終戦後の飲み会の場所を確認。

 21時帰宅。着替えてランニングへ。結構速いペースで6キロ。朝も昼も夜も走りやすい季節だ。
 風呂に入ってマサージの後、足底筋膜炎の足裏をアイシング。5歳の息子が起きていて、「パパ、僕のジュース昨日飲んだでしょう。僕はものすごく怒っているんだよ。だからかくれんぼしよう」とタンスの中に隠れる。「あれ? どこにいるんだ?」としばらくそのかくれんぼに付き合う。最近息子がカワイイ。晩飯。ぶりの照り焼き。

 食後、ニュースで「日本対韓国」の結果を確認した上、録画しておいたチェルシーVSマンチェスター・シティを見る。私が好きだったベラミーはウェールズのカーディフ・シティFCにレンタル移籍中らしい。あの人も殺しそうなドリブルが見れず寂しい。

 調べ物があったので目黒さんの『笹塚日記』を全作ペラペラと確認したが発見できず。
 というわけで日記も笹塚日記風に。
 1時就寝。

10月8日(金)

 通勤読書は、北方謙三の待望のハードボイルド新作『抱影』(講談社)。
 数カ月前、猛烈にハマった「ブラディ・ドール」シリーズの興奮ふたたび!とばかりに読み出したのが、その期待を裏切ることなく、それどころか軽く乗り越えてしまうほどの素晴らしさに、しびれまくりの大興奮。

 あらすじや内容を紹介したいのだが、どんな言葉を使っても陳腐に聞こえてしまう作品であり、とにかく読んで欲しいの一言に尽きる。

 先週の深夜、八重洲ブックセンターのアルバイト時代から大変お世話になっている、我が師匠のひとりである書店員さんからメールが届いた。

 その書店員さんは、つい数週間前に他の書店へ転職されており、メールには転職先での様子とともに、「オイラも今、いっぱいいっぱいに頑張ってます」と書かれていた。その一文を読み、私は思わず涙があふれてしまった。

 というわけで神保町のT書店さんを訪問し、Kさんにご挨拶。
 こちらは有名なベテラン書店員Sさんがいらしたのだが、定年退職を迎えたそうで、これからはその下で働いていた人たちやKさんが盛り上げていくそうだ。評価の高い老舗書店だけにやりにくい面もあるかもしれないが、「頑張るよ!」と笑顔で新刊を並べている姿を見て、また涙が溢れてきてしまった。

 私も負けずに頑張らなければ。

10月7日(木)

 昼、とある地方の書店の経営者さんが遊びに来られる。
 昼食をご一緒しながらいろんな話を伺う。

 書店の経営は主に、店売、外商、教科書販売によって成り立っているのだが、今のようなご時世だと店売は下がる一方で、だからその分、ある程度数字のつかめる外商や教科書販売に熱心な書店さんも多い。

 ただし教科書販売は、長年の付き合いにより取引ルートが決まっていたり、教科書自体の儲け幅は少なく、電子辞書を含めた副教材で儲けるかというところが大きいらしい。その年度ごと、あるいは先生の方針によって結構売り上げが左右されるそうだ。

 もうひとつの柱として外商があるのだが、ここが最近苦しいらしく、特に公共機関が入札制を導入してから、各書店の値引き合戦となり、ほとんど儲けの出ない掛け率で納品しているとか。

 この日その書店経営者さんから伺った公共図書館への納品掛け率は、目が飛び出るような低率で、しかも図書館がすぐそのまま使えるようにビニールコーティングするなどの装備までが条件付けされているそうだ。人件費や手間を考えたらどう考えても赤字ではなかろうか。

 なんだかよくわからないのは、本は再販制ということで、私も含めほとんどのお客さんが定価で本を買っているというのに、なぜ公共施設が本の値引きをせまるのか。それによって苦しめられるのは町の本屋さんであり、地元の本屋さんだ。町が本屋さんを育て、本屋さんが町を育てる。そのような良い環境は作れないのか。

 夕方、吉野朔実さんのところへお邪魔し、サイン本予約していただいたお客さんのため大量にサインをしていただく。吉野さんといえば、穂村弘さんとの公開対談も予定しているのだ。ご期待あれ。

10月6日(水)

 今月の新刊『神様は本を読まない』吉野朔実著の見本を持って取次店廻り。

 見本出しには10数冊の本を持参しなければならず、大きな手提げ袋に入れた本が、私の手のひらを赤くする。一軒一軒廻って行くごとに軽くなるのが心地よい。実感のある仕事は楽しいものだ。

 会社に戻り、デスクワークをこなし、改めて松戸へ。

 今夜は駅前の良文堂書店さんで行われていた第4回「ガチンコ対決フェア」の結果発表会なのであった。

 このフェアは10社の版元営業マンがそれぞれ売れると見込んだ本を並べ、1ヶ月間の販売数を競い合うフェアなのだが、上位入賞者にはフェアコーナーの使用権利がプレゼントされるためか、多くの版元が参加希望があるとかで、なんと下位2社は次回参加権を剥奪されてしまうのであった。まるでJリーグのようななんとも厳しい入れ替え戦方式なのだ。

 今回は売ることをあまり意識せず本を選んでしまったので、たぶん降格するだろうと覚悟して発表会にのぞんだのだが、ギリギリセーフの6位で、次回も参加できることに。

 発表を終えた後は、幹事の高坂さんと柴崎友香の新作『寝ても覚めても』(河出書房新社)について語り合う。高坂さんは大の柴崎友香ファンなのであるが、「いやあこれはほんと傑作でしょう」と嬉しそうに話される。

 私が柴崎友香の小説を読んでいつも感じるのは、その独特な文体で、小説を一度映画化し改めてそれを小説に書き起こすような視覚的な文章で、それは柴崎友香にしか書けない文章なのであった。

 そして読者である私は映画を見るようにして、そこに登場する私より少し年下の、私とはまったく違う価値観のもとに生きる男女の暮らしを覗き見るのであった。

10月5日(火)

  • 黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
  • 『黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)』
    リシャルト・カプシチンスキ,工藤 幸雄,阿部 優子,武井摩利
    河出書房新社
    2,860円(税込)
  • 商品を購入する
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 池袋のリブロを訪問し、矢部さんとお話しているその机の周りには、矢部さんがこれから買おうとしている本が山積みになっていた。そのなかの1冊が、河出書房新社の世界文学全集の『黒檀』カブシチンスキで、これはどうも小説ではなくルポルタージュであり、しかもアフリカ諸国を舞台にしたものらしい。ペラペラと見てみるとものすごく面白そうで、早速購入。

 リブロといえば、『「今泉棚」とリブロの時代』今泉正光(論創社)と『セゾン文化は何を夢みた』永江朗(朝日新聞出版)が出ている。両著ともすでに読み終えているのだが、『書店風雲録』田口久美子とともにあの時代のリブロや西武に影響を受けた人間は必読の書だろう。

 その後、ジュンク堂書店を訪問し、コミック売り場のHさんと『さよならもいわずに』の話していると、じゃあこれがと『cocoon』今日マチ子(秋田書店)をオススメされる。こちらも早速購入し、電車のなかで読み出したのだが、絵柄からは想像もつかない戦争をテーマにしたマンガで、思わず涙が溢れてきてしまったのだが、これが最後まで読んだ上であとがきを目にして驚く。そ、そういうことなのか。改めて読み直すとまったく違う物語に見え、それはそれでものすごく感動したのであった。結局私たちに残された唯一の武器は想像力ということなのだろう。

10月4日(月)

 昨日また浦和の自宅から春日部の実家まで約15キロ走ったのだが、身体はどこも痛くならず、いつもどおりなのであった。
 もはや私はランナーなのではなかろうかと調子にのっていたのだが、営業はまったく担当者に会えず、大撃沈。職業を変えたほうがいいのかもしれない。

 ランナーは儲かるだろうか。
 ちなみに東京マラソンの賞金は1位800万円プラス副賞300万円の計1100万円なのであった。しかも世界記録を出して優勝すると3000万円のタイムボーナスが支給され、最大4100万円ということだ。これだけあったらしばらく何もしないでも暮らせるではないか。まあ東京マラソンにエントリーもしていないのだが......。

10月1日(金)

 先週末、所属するサッカーチームのチームメイトのひとり、石野くんから「杉江さんの脹ら脛と太ももの筋肉見とれちゃいますね」と言われ、私はあまりの心地よさから昇天しそうになったのであった。なぜなら石野くんの職業は整体師で、身体に関してはプロフェッショナルなのだ。そんな人間から筋肉を褒められたら、毎晩風呂場の鏡に自分の足を映し、うっとりしているランナーが有頂天になるのも仕方ないというもんだ。

 その石野くんに「実は足の親指の付け根が猛烈に痛くなることがあるんだけど通風かな?」とここ数日の心配を相談すると、石野くんは温かい指で私の足の裏や足首を触りすぐさま診断結果を下してくれたのだ。

「杉江さん、これマラソン選手とかがなる足底筋膜炎ですよ。営業でも相当歩いているんでしょう? えっ毎日2万歩ですか。それ以外で週40キロも走ったら、そりゃ筋肉も疲労しますよ。青竹踏みしたらいいかなあ......」

 まさか高校を持久走大会のないところで選んだ人間が、マラソンのし過ぎの病気に悩まされるときが来るとは、人生わからないものだ。

 10月の新刊『神様は本を読まない』吉野朔実著の新刊営業の佳境を迎え、注文の出ていない書店さんをジグザグ営業。
 この日は吉祥寺から府中に横移動したかったのだが、これが電車だと一苦労なのである。中央線から京王線を乗り継ぐには一度明大前まで戻らなければならず、これがかなり遠回りなるのでならば調布駅行きのバスとも考えるのだがバスはバスで時間がかかるのであった。

 営業マンからすると南武線武蔵野線の大円形と山手線の小円形の間に、中円形の路線を敷いて欲しいのであった。行徳から松戸とかその辺を横移動できる電車よ、出よ。

 コミックの売り場の営業は、完全アウェーで落ち込むことが多いのだが、府中のK書店さんでは温かく迎えていただき感動を覚える。

9月30日(木)

 給料日。
 仕事を終えて向かった先は、ブックファースト新宿店。

 こんなことを大きな声で言えないけれど、実はこのお店だけは私の本屋さんの最後の砦として、営業マンとしてはほとんど訪問していないのである。この規模の本屋さんを営業訪問しないなんてとんでもないことなのであるが、会社から一番寄りやすい大型書店であり、ここだけは個人的に楽しめる場所としてどうしても取っておきたい。

 細かく枝分かれした売り場が使いやすいか? と問われたら疑問を感じるけれど、何ごとも使いやすいことがベストなのではなく人文書や理工書の売り場へ入るために別の入り口をくぐるのは、また別の本屋さんを覗いたようで気分が新たになるのが嬉しい。

 またこの日の文庫売り場では、「次に読むならコレ!」というフェアが行われており、集英社文庫や角川文庫の夏フェアの冊子じゃないが、お店独自のセレクトによって、人気文庫作品の次に読むべき本のセレクトフェアが行われているのであった(10月9日まで)。あまり語られていないかもしれないが、文芸書の壁棚などブックファースト新宿店のフェアは面白いのである。

 給料日、喜び勇んで購入したのはこの日が発売日の絲山秋子著『妻の超然』(新潮社)である。
 絲山秋子は私が今、もっとも愛する作家の一人であり、この作品が単行本になるのをどれだけ心待ちにしていたか。

 というわけで帰りの電車のなかで早速読み出したのだが、まず何よりもその文章表現の的確さに心地よく酔うのであった。例えば旦那が浮気していることにとっくのとうに気づいている妻の心理を描いた「妻の超然」の妻が、旦那の部屋のドアに指先で描いた一言。あるいは酒が飲めない男の子が酒好きの彼女との付き合いを描いた「下戸の超然」で、久しぶりに実家に帰りお母さんと向かった海浜公園の描写。作家とはストーリを考えるだけの生き物でなく、それをいかに伝えるのかという一番大事なことを思い出させてくれる中編集である。

 帯には辻原登さんの言葉として「超然とはパッション(受苦)である」とあるが、私は超然とは絶望の先にある赦しだと感じた。至福の時間。

9月29日(水)

  • ツイッターってラジオだ! ~ナンバーワンツイッター番組のパーソナリティがつぶやくあなたの味方を増やす59の方法~
  • 『ツイッターってラジオだ! ~ナンバーワンツイッター番組のパーソナリティがつぶやくあなたの味方を増やす59の方法~』
    吉田 尚記
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 昨日の夜、お伺いした松戸の良文堂さんの入り口で、なんだか画板を手に立っている人がいたので何かと思ったらサイン会だった。DSCF1100(1).JPG

 ふつうサイン会といえば、店内にテーブルを広げ、仰々しく行うものなのだが、いやはやただ店頭に立って、サインするとはどんな本の......と覗き込むと、おお、確かマンガ大賞の首謀者のひとりでニッポン放送のアナウンサー・吉田尚記さんではないか。マンガ大賞を創設されるとき「本屋大賞をぱくらせてください!」とわざわざお伺いいただいたのであった。

『ツイッターってラジオだ!』(講談社)という本を出されたそうで、いやはや出版業界外の人は面白いことを考える。脇で見ていると、ツイッターを見たり、ラジオのリスナーの方がちらほらとやってきて、吉田さんとゆっくりコミニケーションを取りながらサインしていた。

 ★   ★   ★

 営業は川崎方面。

 丸善ラゾーナ川崎店を訪問すると、そのあまりに楽しげに本を売っている(棚作りをされている)売り場に、実はここ数日実はかなり落ち込んでいたのだが、愉快な気分になってきてしまった。フェアのアイキャッチに学校の机を置いたり、「勝手に映画化!」なんてフェアを小冊子を作って展開しているのだ。それも文芸書だけでなく、専門書でも面白フェアをたくさんしているのである。おそらく今、私が廻っている範囲で、一番楽しい本屋さんだろう。

9月28日(火)

 中島京子作品のなかでなぜか唯一未読だった『平成大家族』(集英社文庫)が、文庫になったので読む。

 一度は出て行った娘たちが、それぞれ問題を抱え、実家に戻ってきて気づいたら大家族へ。ただしそれがいわゆる「大家族」でなく、現代的な大家族であり、どのような結着を見せるのか、山本幸久と似たような温かさとユーモアをもった小説だ。

 大好きな書店さんのひとつ、清澄白河のBOOKSりんご屋さんへ。
「どうしたらもっと売れるか、そればっかり考えている」とH店長さんが話されるとおり、品揃えはもちろん、雑誌前のちょっとした棚など30坪の店内は工夫があちっこちになされている。

 しかしそんな工夫も吹き飛ぶほど景気は悪く「なんだかバブル崩壊のときみたい」とのことで、一生懸命やっても数字が上がらないと、なんだかやる気もなくなってきちゃうよねと落ち込んでいらした。

 お茶を飲みながら、「町から◯◯屋さんがどんどんなくなっているよね」という話になり、そんな中で増えているのはなんだろうと考えていたら「パン屋さん」だった。確かに町のあちこちにパン屋さんがあるのだが、それは「食文化が変わったからだよね」とH店長さん。

 ならば「本を読む文化」はどうなんだろうか。
 おそらくかつては「本を読んでいるのはカッコいい」あるいは「読んでいないと恥ずかしい」というのが、ある種の層にはあったと思う。だからこそ、読まない(読めない)ような本まで売れていたのではないか。私の十代後半から二〇代前半にかけて、主にリブロ池袋店で買った本は間違いなくそういう本だった。そしてそれらは今も読めずに実家の本棚にささっている。本を読むことと同様に持っていることに意味があった時代(文化)があったのだ。

 今はどうだろうか。
 「本を読む」というのにはどういう意味があるだろうか。いや「本」はどういう認識で理解されているのだろか。

 なんだか随分話がこんがらがって来てしまったのだが、私が一番考えたいのは、ここまで本が売れなくなっているのはおそらくどこかで「本を読む文化」がなくなってきており、ならばそういう人たちに「本を読む文化」を伝えるにはどうしたらいいのかということだ。

「本の雑誌」も本屋大賞も私の気分としては「本って面白いんだよ!」というのを伝えているもので、だからこそ一生懸命関わっているのだが、もしかしたら面白いとか楽しいとかを伝える以前に、本を読むという行為そのものを伝えなければならない時代なのではないか。

 あるいはもしかしたら、新古書店の台頭や図書館の発展など実は「本を読む文化」はまったく変わっておらず、単に書店さんや出版社にお金が落ちてこないだけなのかもしれない。

 人はどうしたら本を読むのか。
 私はなぜ本を読むのか。

 随分長い間、二人で話し込んだ後、喫茶店を出て、H店長さんと歩く。

 頭のなかはぐるぐるしているのだが、でも、結局、私たちに出来ることは、H店長さんのようにいいお店を作ることと、そして私は、いい本を作り、営業するだけのことなのではないかと思ったりもした。

9月27日(月)

『新徴組』を読んだら新選組が読みたくなり、『燃えよ剣』司馬遼太郎(新潮文庫)を再読。

『竜馬がゆく』と並び称される司馬遼太郎の人気作品だが、以前読んだときに記しをつけたところに同様に興奮を覚える。それは土方歳三と沖田総司が新選組の先行きを話すシーンだ。



「どうなる?、とは漢の思案ではない。婦女子のいうことだ。おとことは、どうする、ということ以外に思案はないぞ」

「男の一生というものは」
 と、歳三はさらにいう。
「美しさを作るためのものだ、自分の。そう信じている」



 ちなみに発行人の浜本の『燃えよ剣』の感想は、「おれさ、これ読んだの高校のときだったんだけど、冒頭の大國魂神社のくらやみ祭りって誰とでもエッチができるんだ!って驚いてさ、大学受かって上京してわざわざ府中に住んだんだよ。それで実際に行ったら、ふつうのお祭りでがっくりして引っ越したんだ。それ以来、司馬遼太郎が嫌いになった」だそうだ。

 事務の浜田が本日までお休みなので、控えめな外回り。

 夜、我らが編集長が、艶めかしい作品を朗読するというので、新宿紀伊國屋サザンシアターのyomyomのイベントへ。その前に江國香織さんと角田光代さんの対談があったのだが、そのテーマが「旅すること、小説を書くこと」で、これはまるで高野秀行さんと宮田珠己さんのタカタマ対談と同じテーマではないか。まあタカタマ対談の場合は「小説が書けない」という話になるのだが......。

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