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4月24日(金)

 昨夜、撮り貯めていたプレミアリーグの中から、リバープール対アーセナルを見たら、これがチャンピンズリーグ準々決勝セカンドレグ、リバプール対チェルシー並みのベストバウトで思わず大声を上げてしまった。妻に叱られるかと思ったら、昨年来すっかりアーセナルファンになった妻も大騒ぎ。

「ねえ、去年までいた13番の選手がいないけど、この23番の選手はすごいね!」

 それは今季途中から入団したアンドレイ・アルシャヴィンなのだが、できることなら私もアルシャヴィンになりたい! もし私が無理なら浦和レッズの原口をアルシャヴィンにして欲しい。サッカー神様お願いします。

★   ★   ★

 昨日は朝から晩まで予定が詰まっていたのだが、本日は何もなし。
 通常業務である、営業に勤しむ。

 神保町の三省堂書店さんを訪問すると我らが高野秀行の『メモリークエスト』(幻冬舎)が、売上ベスト6位に入っているではないか。7位『無趣味のすすめ』村上龍(幻冬舎)、8位『欲情の作法』渡辺淳一(幻冬舎)と並んでおり、思わずこれは幻冬舎の売上ベストテンかと思ったがそうではなく、文芸のベストテンであった。すごいな、高野さん。

 東京に移動し、丸善丸の内店を訪問。6月刊行予定の『今夜もイエーイ!』大竹聡著はお店によって置き場が文芸だったり、地図ガイドだったりして興味深い。どちらにしても草薙くんに読ませてあげたい本である。

4月23日(木)

 朝、会社に出社し、メールチェックなどした後、吉祥寺へ。高野秀行さんと打ち合わせ。

 そういえば、事務の浜田から「杉江さんが担当している作家さんはなぜか男ばかりですね、ぐへへへ」とあらぬ疑いをかけられたのだが、言われてみれば高野さんはじめ、宮田珠己さん、はらだみずきさん、大竹聡さんもみんな男性で、それも年齢も同じくらいではないか。どうなっているんだ、俺は......。

 営業した後、会社に戻り、16時からネット書店B社と打ち合わせ。終えるとすぐさま赤坂へ移動し、WEB本の雑誌の会議。またその後は本屋大賞の会議と、なんだかやたら人と話をしているうちに一日が終わってしまった。

4月22日(水)

  • うちのまる ~養老孟司先生と猫の営業部長
  • 『うちのまる ~養老孟司先生と猫の営業部長』
    有限会社 養老研究所
    ソニー・マガジンズ
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 先日訪問した浦和の紀伊國屋書店さんでは、『うちのまる 養老孟司先生と猫の営業部長』有限会社養老研究所(ソニーマガジンズ)がロングセラーで売れていると話していたが、顧問目黒が興奮していた猫小説『きりこについて』西加奈子(角川書店・4月末刊)を会社に届いていたゲラで読んだのだが、目黒のいうとおり傑作であった。西加奈子独特の文章と、IQ740のラムセス2世(猫)がたまらなく愛おしい。

 朝、会社に出社し、メールチェックなどした後、デザイナーさんのところへ。

 6月刊行で進めている爆笑酒飲みエッセイ『今夜もイエーイ!』大竹聡著の装丁の打ち合わせ。酒飲みといえばこの人だろうと呉事務所を訪問したわけだが、「酒とつまみ」も知っているし、大竹さん行きつけのロックフィッシュにも入り浸っているようで、こちらがイメージを伝える前にどんどん酒飲みのイメージでまとまっていき、うれしいかぎり。

 東京駅の大丸地下街で、「たい焼き 鉄次」というのを発見し、突如たい焼きマニア化している私は当然食す。こちらのたい焼きは完全オートメーション化されており、窓ガラス越しに「全自動たい焼き機」が見えるようになっている。

 たい焼きマニアの師匠A氏は「たい焼きには『天然』と『養殖』があるの知ってますか? 『天然』は一枚一枚の型で焼くやつで、一気に5枚10枚焼いているやつが『養殖』なんですよ」と言っていたが、これはいったいなんと呼べばいいんだろうか。バイオたい焼きだろうか。たしかに形もタイというよりはまん丸だし。

 北千住の紀伊國屋書店さんを訪問するとHさんが山盛りの児童書を抱えて、売場を移動していた。本や雑誌は重いので書店員さんも大変だ。

 文芸書(小説)がなかなか売れない話。この後訪問した松戸の良文堂でも同様の話。そんななか文庫は前年を越えているとかで、そりゃあこれだけ文庫化が早くなったら文庫を待つだろう。伊坂幸太郎、森見登美彦、万城目学、有川浩あたりは、単行本でも売れる作家か。

 さーて、どうしたもんか。

4月20日(月)

「そんなの売れないよ!」

 出版営業マンなら一日に一度は聞くこの言葉。裏を返せば編集者に同じ言葉をかけていることも多いのだが、じゃあ言われて悔しくないかといったらそんなことはない。例え書店さん同様「売れないだろうな」と思っていても、自社本には屈折した愛があるから、出すだけで意義があると思っている編集者に比べたらその悔しさは何倍にもなるだろう。

 また書店さんも営業マンも、未来が見えるわけじゃないから「売れない本」からベストセラーが出ることもあり、その指摘がすべてではないことも知っている。だから書店さんでチラシを前に「売れない」と言われたときに、悔しさとともにメラメラと燃えてくるじゃあ売ってやろうじゃないかと思う反骨心、それこそが営業の原動力なのかもしれないし、そのための創意工夫が営業という仕事なのかもしれないと気付いた37歳の春である。

 まあ売れないものを売るのが営業と言ったのは、私の尊敬する営業マンだったが、売れないもんはどうやっても売れないというのも真実だったりするから、難しい。磨いて磨いて磨きまくった末がダイヤモンドならともかく、石ころの可能性もないわけで、そうなると毎日の営業は、まさに不毛の連続だ。

 出版営業の虚しさは、注文=売上でなく、その後返品が発生するので、今日得た大量の注文が実は無駄になる可能性も大ということだ。こんなことを電車に揺られながら考え出したら、5月病はすぐそこ。転職、退職への道まっしぐらだと思うけれど、そんなものに価値を見いだしているうちは、営業なんてやってられない。

 じゃあ何に価値を見いだすのか。それは人それぞれだと思うけれど、僕は本を間に挟んで、シビアに多くの人に出会えるこの仕事は、たとえ最近、編集という仕事をやっていても手放せない。編集がアウトプットだとしたら営業はインプットの仕事。売場にある様々な情報を仕入れ、次なる営業、次なる本作りに活かすのだ。そして書店員さんのこの言葉を聞くために。

「あっ! 売れそうですね。注文いっぱい出さないと」
 

『尾道坂道書店事件簿』の3刷が決定!

4月18日(土) 炎のサッカー日誌 2009.03

 娘のサッカーを終えて駆けつけた埼玉スタジアム。ここで行われているのは浦和レッズで初めて「楽しいサッカー」であり、「美しいサッカー」である。

 さてそういうサッカーがグラウンドで行われるようになるとどうなるか。

 スタジアムに行くのがより早くなるのである。

 我が観戦仲間は20人くらいいるのだが、たいてい当番を決めて、前日抽選係(私)と当日点呼係と分け、それ以外は、試合開始1時間前くらいにやってきていたのである。

 ところがフィンケが浦和レッズにやってきて、コンビネーションサッカーの名の下にパスが5回以上繋がるサッカーが始まり、その核として山田直輝が、まさに98年フランスワールドカップ予選時の中田英寿なみの衝撃のデビューを果たすと、試合修了とともに「早く次の試合が見たい」という欲求が心の底からわき出した。

 そして試合当日を迎えると、もはや待っていられず、いち早くスタジアムへ向かうのであった。
 私の仲間も、私自身ももう待っていられないのである。

★   ★   ★

 紛らわしい色のジャージ姿で練習する京都サンガは、埼玉スタジアムの声量と浦和のパスサッカーに圧倒されたのか、前半はまったく何もできず、ぼんやりとピッチに立っていた。

 その間をまるでマンガのようにサッカーをする山田直輝と原口元気は、おそらく「元気くんいくよ」「ありがとう直輝」と声をかけあっているのではないかと思わされるのほどのすばらしいコンビネーションでボールをつなげて行く。

 恐ろしい。浦和のサッカーが恐ろしい。かつてサッカーの情報が今ほど入ってこなかった頃、ダイヤモンドサッカーやトヨタカップを見ていて出てくるのは声援や罵声ではなかった。あるのはため息に似た驚きの声ばかりだったのであるが、今、埼玉スタジアムでサッカーを見ていると当時と同じように「おー」と声をあげてしまう。おまけに私の身体は全身鳥肌になっており、今にも夜空に飛んで行きそうだ。

 残念なのは1点しか入らなかったことで、本来であれば5対0で勝利すべき展開だった。それとこんなに素晴らしいサッカーをやっているのにたった41,836人の観客しかいなかったことだ。はっきり言って2、3000円で楽しめる世の中のすべてものと比べても、今の浦和サッカーは負けないはずだ。それはもっと素晴らしくなる。スタジアムへ行こう!

4月17日(金)

  • 英国人が見た新世界―帝国の画家ホワイトによる博物図集
  • 『英国人が見た新世界―帝国の画家ホワイトによる博物図集』
    キム スローン,Sloan,Kim,志津代, 増井
    東洋書林
    9,173円(税込)
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 昨夜ジュンク堂書店池袋本店で行われた椎名誠トークショーは大盛況の上、笑いっぱなしで無事終了。もはや何を話すかというよりは、話しているだけで面白く、これは落語などの話芸に近いのではないか。

 トークが始まる随分前から椎名さんはジュンク堂にやってきており、山のように本を買っていた。その中に『世界怪魚釣行記』武石憲貴(扶桑社)という面白そうな本があったので、トーク終了後、私も買いに走る。パプアニューギニア、アフリカ、東南アジア、モンゴル、アマゾンへとんでもない魚を釣りに行く様子が、オールカラーの写真とともに綴られている。まだ一行も読んでいないけれど、ヨダレが出てくる本だ。

 良い本に出会えたなと喜びつつ、リブロを通って帰ろうと思ったのだが、そこにはもちろん本がある。自然と新刊台に吸い寄せられ、リブロ名物・人文書のコーナーを徘徊すると面陳されている1冊の本が私の視覚にピカピカ輝いて飛びこんでくるではないか。

『英国人が見た新世界 帝国の画家ホワイトによる博物図集』キム・スーロン(東洋書林)。

 当然無知の私はホワイトなど知らないのであるが、見返しには「1585年、英国人絵師ジョン・ホワイトはノースカロライナ沿岸部に向かう英国人の一団の中にいた。〜中略〜 彼の任務は『あらゆる珍しい動植物、鳥、魚、薬草、それに英国とは違った服装をした人々の姿や変わった武器をありのまま描く』ことだった。」とあり、その絵がすべて納められているのが、どうもこの本のようなのだ。そしてその絵の素晴らしさといったら......。

 値段を見ると5250円だった。私の財布には6348円入っており、買えるには買えるのだが、その後どう暮らしていいのかわからない。今月から息子が幼稚園に入り、我が家の緊縮財政は一段と厳しくなっており、妻から金をもらったり借りたりするのは不可能であろう。でもこの本は欲しい。欲しいったら欲しい。

 財布のなかには禁断のクレジットカードがあった。独身時代はこれで余計なものを買いすぎて、私の給料は私が手にする前にどこかの組織によって銀行口座から引き落とされていたのだが、今はほとんど使っていない。新刊台の隙間から、本の神様が出てきて囁く。

「本は一期一会ですぜ」
「内需拡大ですぜ」

 私は財布からカードを抜き出し、レジへ向かった。ものすごい満足感が襲ってきた。

4月16日(木)

『古本買いまくり漫遊記』北原尚彦著(4月22日搬入)の見本を持って取次店周り。

 途中、神楽坂の名物書店、深夜+1を訪問すると店長の浅沼さんから「これは歴史的傑作なんだよ!」と『弁護側の証人』小泉喜美子を見せられる。1963年に出た本で、1978年に同じく集英社文庫になったものの復刊か。帯にはそうそうたる作家、評論家の名前が並び「大傑作ミステリー」とある。

 会社に戻ると顧問の目黒さんが来ていたので、早速「これ知ってますか?」と見せると、「バカ、お前それは大傑作だよ!」と当然のように語られる。無知がバレてしまったではないか。

 目黒さんからは西加奈子のこれから出る新刊『きりこについて』(角川書店・4月30日発売予定)を強烈にプッシュされる。

「西加奈子の傑作だぜ! 特に猫好きは必読、面白いんだー」

目黒さんとこうやって本の話をするのは久しぶりでなんだかとても楽しい。

 さあ、これから椎名さんのトークショーの立ち会いだ!

4月15日(水)

  • ふるさとの生活 (講談社学術文庫)
  • 『ふるさとの生活 (講談社学術文庫)』
    宮本 常一
    講談社
    990円(税込)
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 日曜日の夜、テレビをザッピングしていたら、私が大変興味を持っているヤノマミが映っていて驚く。あわてて新聞のテレビ欄を見ると、NHKスペシャル「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる」とあり、すでに開始して5分が過ぎていた。番組としてはそこから見てもわかるだろうが、これは永久保存版として録画しておくものだろう。深く落ち込んでいたところ、よりその落ち込みを深くするように番組が素晴らしく、泣くとか笑うとかそういうレベルでない感動が私を包み、その晩は眠れなかったのである。

 ああ、もう一度見たいと、何気なくホームページを検索すると、なんとすぐに再放送することが記されているではないか。というわけで昨晩、無事録画に成功したのである。

 通勤読書は、『ふるさとの生活』宮本常一(講談社学術文庫)。
 ひとがどうやって生きてきたのか、そういうことに私は大変興味があるので、今、こういう本を読むのが一番楽しい。

★   ★   ★

 年末に会った太田出版のMさんから「営業を続けているとつい訪問しやすい書店さんばかり訪問するようになってしまいこれはいかん!と表を作り、自分の営業を管理するようになったんです」と聞いたのがずーっと頭に残っている。そうなのだ、つい自分に甘くなって、楽な方、楽な方に流れちゃうんだよな、ということで本屋大賞も終わったことだし、大いに反省し、ルートどおりにきっちり営業を進める。

 途中、たいやきマニアの浦和の紀伊國屋書店のSさんから「コルソのなかの『くりこ庵』のたいやきは、皮厚系だけどその皮がフワフワで冷えても美味いたいやきベスト1だ」と情報を仕入れ、すぐさま向かってしまったのはご愛嬌。私は薄皮派だが、確かにここ『くりこ庵』の皮は暑いけど水っぽさがまったくなく美味かった。たいやきの写真を撮って掲載するつもりが、あまりの美味さに全部食べてから思い出した。

 その後は、我が営業の師匠C出版社のAさんから「ちゃんと廻らなきゃあかんよ」と連絡いただいた書店さんを訪問し、大宮へ。

 大宮の書店さんを廻りつつ、私の頭の中にあったのは、我が地元・春日部のリブロさんである。
 こちらはオープンしてすぐ訪問したきりなっているのだが、担当のNさんは池袋時代からお世話になっており、いつも気になっていたのである。

 時計は5時半を差していて、果たしてこれから春日部に行っているであろうか。おまけに雨が降り出していて、私は傘を持っていない。野田線に向かう通路で悩んでいたとき、前述のMさんの言葉が蘇る。野田線の人となる。

 なぜか春日部に着くと、私はポケットに手を入れ、がに股になってしまう。背も低いくせに猫背になり、睥睨するようにガンを飛ばす。当時良く聴いていた「Bad Boy Blues」が、i-Podに入っていたので聴くと、突然いろんなことを思い出す。ああ、ここにあった(はずの)ビリヤード場に夜な夜な通っていたのだ。

 運良くリブロのNさんはいらっしゃり旧交を温める。
 地元は落ち着く。

4月14日(火)

  • 江戸の食生活 (岩波現代文庫)
  • 『江戸の食生活 (岩波現代文庫)』
    原田 信男
    岩波書店
    1,430円(税込)
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 暖かいというよりは暑い。桜が咲いたと思ったらもう初夏だ。
 息子は私の心配をよそに、朝起きたときから「幼稚園いくろー、バスいっちゃうろー」と騒いでいた。

 通勤読書は『江戸の食生活』原田信男(岩波現代文庫)。その書名のとおり、江戸時代にどんな食べ物が食べられていたか、庶民や武士あるいは将軍といった階級の違いや、山の民、海の民、蝦夷、琉球など地域によっての違いなど、とことん多方面から「江戸の食」が書かれており、大変面白い。

 年を重ねると食の趣向が変わるというが、私は相変わらず野菜、乳製品、ナマモノが食べられない偏食男子であるが、読書の趣味は完璧に変わってきている。例えばこの通勤読書で取り上げたように岩波文庫がここ数年で、私の書棚に増殖している。それにあわせてかどうなのかわからないけれど、私が見るテレビは、圧倒的に東京12チャンネルが急増しており、ここに岩波文庫=東京12チャンネル論が成り立つのではないかと編集部に言ってみたが、無視されてしまった。

 しかし例えば私が愛する『忘れられた日本人』宮本常一は、芸能人がアポ無しでふつうの家に泊まる「田舎に泊まろう!」であり、『手仕事の日本』柳宗悦は、お宝の鑑定をする「なんでも鑑定団」だ。また『わが住む村』山川菊栄は、その街の名物をランキングで紹介する「出没!アド街ック天国」なんていうのは、さすがに無理があるか。

★   ★   ★

 昨日営業で廻った書店さん2軒で、「売れてますよ!『本の雑誌 炎の営業日誌』 追加しちゃいました」と言われ、ビックリする。本屋大賞効果? そんなことないか。

 本を営業したり、作ったりしているうちに、すっかり自分が本を出していることを忘れてしまっていた。そういえば、ここ最近「面白いじゃないですか!」と読者からメールも届いており、面白いんです、『本の雑誌 炎の営業日誌』(無明舎出版)と突然宣伝してみるのもたまにはいいか。Jリーグが開幕したので、観戦のおともにどうぞ。

★   ★   ★

 愛すべき町の本屋さん、茗荷谷のBOOKsアイさんを訪問するが残念ながら店長のKさんは不在。1周年記念で開催されているサイン本フェアには小社の椎名誠や沢野ひとしのサイン本を提供しているので、ぜひお近くにお寄りの際は覗いてみて下さい。

 このBOOKsアイさんを訪問して驚いたのは、我らが編集長の代表作『哀愁の町に霧が降るのだ』の三五館版が平積みされており、そこに「文庫は品切れになっていて、今読める哀霧はこれだけ!」とあるではないか。そういえば本の雑誌フェアにあわせて『本の雑誌血風録』を注文した書店さんから、新潮文庫版は品切れになっていて、朝日文庫版を並べましたと報告を受けたのであった。

 そうか、私の人生を大きく変えた椎名誠の代表作は、こうやって世の中から消えていくのか。もちろん毎月文庫の新刊が出ればその分倉庫や在庫の関係から品切れ絶版になるのは、営業である私には理解ができる。

 それにしても「まだまだ話は始まらないのだ」というとんでもない書き出してスタートする『哀愁の町に霧が降るのだ』が、新刊書店の文庫売場にないなんて信じられない。木村晋介が鶏ガラのすべてを食ったところで、18歳の私は文字通り「く」の字になって笑ったのである。あれが本を読んで笑った最初のときだった。そして本は面白いんだと私が初めて気付いた瞬間でもあったのだ。

4月13日(月)

 桜が雪のように降りしきるなか入園式を金曜日に終えた息子は、本日からバスで登園だ。

 1ヶ月ほど前に制服が届いてから毎朝「今日幼稚園ないよ。家でテレビ見てるよ」と言っていた息子だけにバスに乗るか心配だったのだが、考えるスキも与えずバスに乗り込ませる先生方は4月のこの時期に慣れているのだろう。

 窓の向こうから私に向かってあかんべーをしている息子よ、父ちゃん嘘をついてごめんな。幼稚園に行っても父ちゃんも母ちゃんもいないんだよ。自転車で後から行くといったのは真っ赤な嘘なんだ。

 埼京線のなかで、下駄箱で泣いている息子の姿が想い浮かび、胸が張り裂けそうだった。

4月9日(木)

 天啓に打たれたように原稿依頼をした『酒とつまみ』編集長・大竹聡さんの原稿がすべて揃い、単行本の制作が着々と進んでいる。

 本日ゲラが出たので大竹さんのところへ届けようと連絡すると「ホッピーマラソンの続きをやっているので私が笹塚へ向かいます」と、六本木での酒場取材を終えた大竹さんが赤ら顔でやってきた。

 打ち合わせはそこそこに我々もホッピーマラソンに飛び入り参加させていただくが、酒のうんちくも料理の善し悪しもまったく語らず、ただただ酔っぱらっていく大竹さんは素晴らしい。途中、お店の人に「これで仕事なの? 幸せだよね」と言われていたが、そのとおりである。

4月8日(水)

  • 本の雑誌 311号
  • 『本の雑誌 311号』
    本の雑誌編集部,本の雑誌編集部
    本の雑誌社
    713円(税込)
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「本の雑誌」5月号が搬入となる。先月はページ数が増え重くなった「本の雑誌」数千冊をひとりで社内に運び込み、そこで体力を使い果たし、一日を終えたのであるが、本日は近刊『古本買いまくり漫遊記』北原尚彦著の校了前で、浜本とタッキーがいたので楽勝である。

 しかしこの5月号の制作は、昨年同様大変で、約70人の作家さんとのやりとりをほぼひとりでしているのだ。胃が頑丈なので穴は空かなかったが、靴下にはたくさんの穴が空いてしまった。

 久しぶりに、銀座、東京、神田、神保町をフル営業。
 途中、若手書店員さんに「こんどきちんと話しますが、愛想つかさないでくださいね」と言われたのは退職の話だろうか。もしそうだとしても愛想なんかつかない。今、書店員を、いや出版業界で働き続けている方が奇跡なのだから。

 夜は、5月号に大笑いのエッセイ「ディズニーランド探検記」を寄稿いただいた高野秀行さんと酒。上智の授業で毎週会っていたからか、1ヶ月も顔を合わさないと夢に出てくる。悪夢になる前にこうやって酒を飲む。

 高野さんの新作「メモリークエスト」(幻冬舎)は本日発売!

4月7日(火)

 通勤読書は『くまちゃん』角田光代(新潮社)。『八日目の蝉』以来すっかり角田さんのファンになってしまったのだが、今回は短編だしと軽く読み始めた私が悪かった。7つの恋愛小説がチェーンのように繋がる連作短編で、すべてふられる話なのだが、全体を通してみると恋愛そのものの成長を描いた長編のようにも読める。

 最後から一つ前の「光の子」で終わらせず、「乙女相談室」を入れたところに角田光代の凄みを感じたし、この人物造形の見事さは宮部さんと肩を並べるのではないか。『アカペラ』山本文緒、『ばかもの』絲山秋子とともにここ一年の私的恋愛小説3部作か、って全部新潮社ではないか!

 朝から本屋大賞に関する問い合わせやら増刊号の注文やら。発表会よりも翌日の方が大変なのだ。もろもろメールしたり、直納したりして、夜にはどうにか祭りの後始末をつける。

 早く帰って走ろう!

4月6日(月)

 2003年に本屋大賞の設立を発表したとき、顔見知りの営業マンから「なんか手伝うことあったら協力するよ」と有難い申し出をいただいた。東京創元社の営業マンは、本屋大賞設立のチラシを持って、私が行けない地方の書店さんを廻ってくれたし、双葉社のOさんからはとにかく告知をしようと、ネット担当のHさんを紹介していただいた。

 そのHさんこそが、目黒考二が『本の雑誌風雲録』で「もし本多健治に話をしなければ、その『本の雑誌』は楽しいおはなしで終わっていたかもしれない。当時、『漫画アクション』の若き編集者で、やたらに好奇心の旺盛な青年だった」と書く本多さんなのであった。編集実務に精通していた本多さんが、目黒さんと椎名さんの尻を叩いたからこそ「本の雑誌」は夢物語で終わらず、創刊されたのであるという。

 私は緊張して本多さんにお会いした。職人のような風貌の本多さんは、おそらく30年近く前に目黒さんや椎名さんにした表情と同じように「面白そうだね、こういうことはどんどんやっていかないと」と言って協力を申し出てくれた。具体的には双葉社が加盟している s-book.netという書店注文用ホームページにバナーを張ってくれたのだ。ここは毎日書店さんが注文する際に見るホームページだから絶大な効果があった。

 それから毎年発表会の招待状を送ったのだが、本多さんはいらっしゃることはなかった。どういう理由からなのかわからなかったが、私はいつも発表会に誰かが足りないと思っていた。

 そうこうしているうちに本多さんは定年を迎えていた。

★   ★   ★

 2009年3月上旬、二次投票を集計すると双葉社の『告白』湊かなえ著が本屋大賞に内定した。その連絡を双葉社にすると翌日営業仲間だったOさんから携帯に電話があった。

「本多がね、役員になっているのよ。だからもうこの受賞はうれしいはずだから、今年こそ出席してくれると思う。招待状を忘れずに送ってね」

 私は翌日、感謝の気持ちを添えて招待状を送った。

★   ★   ★

 この日行われた本屋大賞の発表会では、私はあっちこっち走り回っていた。特に用があるわけでもないのだが気になるところをチェックする係なのだから仕方ない。

 やっと一段落ついて受付に戻ると、ちょうどその時会場から出てこられたのが本多さんだった。きちんと顔を合わすのはそれこそ2003年以来だから6年半ぶりだ。私は思わず手を出して握手を求めると、本多さんは一瞬ポカンとされたが、私だと思い出すと、強く手を握り返してくれた。うれしかった。泣きたいくらいうれしかった。本屋大賞は、私にとってかけがえないものになろうとしている。

4月3日(金)

 昨夜は遅くまで本屋大賞発表会のリハーサルがあり、家に帰ってからは今日の朝行われた企画会議の企画を明け方まで練る。

 深い眠りにつく前に目覚まし時計が鳴り、埼玉スタジアムの自由席前日抽選に向かうが、私の身体は延長戦を終えたサッカー選手のようにふらふらであった。

 いよいよ来週月曜日とせまった第6回本屋大賞であるが、何気なくyahoo!を覗いてひっくり返る。
 なんとトップページにでかでかと紹介されているではないか。感謝感激。

 ちなみに昨日から配布されているフリーペーパー「R25」のイベントカレンダーにも掲載されており、なんていうかこういう好意によって本屋大賞はこの第6回まで続けて来れたのだ。

 みなさん応援ありがとうございます。そしてよろしくお願いします。
 我ら実行委員一同、月曜日の発表に向けてラストスパートしております。

4月1日(水)

  • 浦和レッズ LEGEND〈1〉赤き勇者たちの物語
  • 『浦和レッズ LEGEND〈1〉赤き勇者たちの物語』
    河野 正
    河出書房新社
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  • 浦和レッズ10年史
  • 『浦和レッズ10年史』
    良之, 大住,浦和レッドダイヤモンズ,浦和レッズ=,ベースボールマガジン社
    ベースボールマガジン社
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 あー参った。通勤電車の埼京線が新宿駅に着く頃には、ハンカチが涙と鼻水でぐしょぐしょになってしまった。花粉症ではない。男泣きだ。発売されたばかりの『浦和レッズ LEGEND1 赤き勇者たちの物語』河野正(河出書房新社)を読んでいたら、もう涙があふれてきて止まらないのだ。

 著者の河野正はレッズサポなら多くが知っている元・埼玉新聞の記者で、その記者が浦和レッズの記憶や記録に残る選手たち32名を描いたのが本書である。ちなみに取り上げられているのは名取篤、広瀬治、土田尚史、福田正博、水内猛、田北雄気、トリビソンノ、柱谷幸一&哲二、西野努、池田伸康、ルンメニゲ、岡野雅行、曺貴裁、バイン、田口禎則、ブッフバルト、福永泰、土橋正樹、トニーニョ、大柴健二、内舘秀樹、永井雄一郎、ペトロビッチ、田畑昭宏、ベギリスタイン、小野伸二、池田学、室井市衛、阿部敏之、井原正巳、マリッチである。

 河野は三菱時代から浦和レッズを追っており、そして埼玉のサッカーにも精通しているだけあって、だからこそ出てくる何気ない文章が胸に来る。例えば引退後はテレビなどで活躍しているひょうきんものの水内猛。

「明るくおちゃめな性格で人気者だった。見た目"軽い"人間のように勘違いされることもあるが、筋を通す一本気な性格。何もできない自分が悔しくて、泣きながら練習していた男である。」

 あるいは何度も僕らの背筋をゾクゾクさせるスルー・パスを福田正博、岡野雅行に送り続けたウーベ・バイン。

「あれから浦和にはすご腕のMFが何人も加入してきたが、あの独特の感性と間合いで繰り出すパスを持ち合わせた選手は、一人としていない。」

 ここで書かれているのはマリッチ以外ほとんどが、駒場スタジアムで活躍した選手たちであり、読んでいると鉄さくにしがみつきながら声援を送っていた様々な光景が浮かぶ。なぜかここでは取り上げられなかった堀孝史のミドルシュート、困った表情で上がるか下がるか悩むサイドバック杉山弘一、期待を込めて見つめていた岩瀬健などなど。

 あの頃の我ら浦和レッズは、それができなかっといえばそれまでなのだが、勝つことや美しいサッカーを見せるなんてことよりも、もっと大切なことを僕らに見せてくれていたような気がする。それは言葉に置き換えることが難しいのだけれど、その代表格が福田正博であり、だからこそ福田はミスターレッズであり、たぶんそれらが「We are REDS」の権限なのだと思う。

 『浦和レッズの幸福』大住良之(アスペクト)や『浦和レッズ10年史』(ベースボールマガジン社)とともにレッズサポ必読の1冊。特に駒場スタジアムに並んでいたくちには絶対のおすすめ。

3月31日(火)

 直行で取次店廻り。

 年度末なのでさすがに空いており、ずんずん進む。年末の『おすすめ文庫王国』とこの『本屋大賞』だけは持参するK取次店に顔を出すと、レッズ仲間のYさんから「今年はまだ桜が咲いてないよ」と言われる。そうなのだ。私は毎年ここに来た帰りに川沿いの公園に咲く桜を見て一年を振り返るのを楽しみにしていたのだ。

 2分咲きの桜の下でぼーっとする。

 会社に帰ると本日で閉店となる青山ブックセンター自由が丘店のKさんから電話。「お世話になりました」。とんでもない。こちらのほうが散々お世話になっておりまして、ぜひまたと思ったら、退職してまったく違う方向に行かれるとか。それほど通えたわけでもないし、酒も飲んだことがあるわけでもないのだが、なんだか泣きたくなるくらい淋しい。

 春は別れの季節でもある。

3月30日(月)

  • サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台
  • 『サッカーという名の戦争―日本代表、外交交渉の裏舞台』
    平田 竹男
    新潮社
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 土曜日は久しぶりに浮き球△ベースに参加。一年ぶりくらいだろうか。
 最初の打席でホームランを打ち面目躍如な感じだったのだが、その後は全打席ホームランを狙って凡打に終わる。帰る頃には太田トクヤ監督からもう来ないでいい、と言われてしまい、次の参戦はまた来年か。

 通勤読書は『サッカーという名の戦争 日本代表、外交交渉の舞台裏』平田竹男(新潮社)。通産省、外務省、経済産業省を経て、日本サッカー協会専務理事となった著者がサッカー協会で主に行った仕事である、日本代表チームのマッチメイクの実情が描かれている。

 それは対戦チーム選びだけに関わらず、どのような方式で戦うか、どこで戦うか、どのように権利を折半するかなど政治力や交渉能力を駆使し、少しでも日本代表に有利な、あるいは日本代表の強化に繋がる方向へ持って行くのである。はっきりいってこんな仕事をしろと言われたら、私は荷物をまとめて埼玉スタジアムへ逃げるであろう。いやはやすごいバイタリティー。

 本屋大賞の発表会の準備などで大わらわなのであるが、本職である営業もその発表媒体『本屋2009』の事前注文締切日であら大変。あっちこっち電話したり、メールしたり、駆け回ったりして、どうにか夕方に〆の作業に突入す。

 ただし、こういう大きな企画の営業をやっているとつい荒い営業になってしまい、その辺で現在、自己嫌悪に落ち入っている。

 発表が済んだら、じっくり営業マンに戻ろうではないか。やっぱり営業は廻ってナンボなのだから。

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