『マンションポエム東京論』

著者:大山顕

予価2970円(税込)

2025年6月20日発売予定

東京はポエムでできている。

 

空と緑の都市に咲くあだ花か、アーバンライフの幻想か。

マンション広告のコピーに託された〈東京〉の正体を読む。

「本の雑誌」連載および「手のひら1」掲載「マンションポエム東京論」、「手のひら2」掲載「どこまで東京?」を全面改稿、書き下ろしを大幅に加え、再構成。

[著者プロフィール]

大山 顕(おおやま けん)
写真家/ライター。1972年埼玉生まれ、千葉育ち。工業地域を遊び場として育つ。千葉大学工学部卒業後、松下電器産業(現Panasonic)に入社、シンクタンク部門に10年間勤めた後、写真家として独立。団地研究家としの顔も持つ。著書に『ショッピングモールから考える』(幻冬舎新書、東浩紀と共著)、『モールの想像力』(本の雑誌社、監修・編)など、多数。『立体交差/ジャンクション』で令和元年度土木学会出版文化賞を受賞。

■A5判並製 ■344ページ
ISBN 978-4-86011-604-0

[目次]

はじめに 010

第一章 マンションポエムとは何か
 
1 マンションポエムは何を「隠して」いるか 016

 ▪本気では受け止められないメッセージ
 ▪第一位「街」、第二位「都心」
 ▪津田沼と港区の一億円差
 ▪音感失認症患者のように読む
 ▪図ではなく地を見る
 
2 マンションポエムの文法的特徴 024

 ▪「刻」「棲む」「澄む」
 ▪マンションポエムとキラキラネーム
 ▪句点の多用と一九九七年
 ▪「都市も自然も」セオリー
 ▪マンションポエムにコンプライアンスとリスク回避を
 ▪マンションポエムの真髄「を」
 
3 マンションポエムはいつからあるか 038

 ▪マンションポエムのパイオニア
 ▪マンションポエムとポップミュージック
 
4 タレント起用と埋立地開発 043

 ▪一九九〇年代のマンション広告コピー
 ▪空撮と夜景ビジュアルの影響
 ▪二〇〇六〜〇八年のタレントブーム
 ▪タレントからアノニマスへ
 ▪「おとぎ話が欲しいのよ」(プリティ・ウーマン) 
 ▪「ジャン・レノ、錦糸町へ帰る。」
 |コラム| チャールズへの私信ポエム 056


第二章 消費財化する街
 
1 街のスペックと序列 060

 ▪住む場所を自由に選べることは「当たり前」か
 ▪団地とマンションの違い
 ▪武蔵小杉の「ベネフィット」
 ▪街のスペック化
 ▪「住みたい街ランキング」の思想
 ▪名前拝借系ポエム
 
2 住民は街の「お客様」になる 071

 ▪街を遍歴して「上り」へ
 ▪比較可能なパラメーターの束としての人間
 ▪街を/人材を「享受」する
 ▪「迎賓」の思想
 ▪立地アピールのための「迎賓」
 ▪何を選択したかが、あなたを表す
 
3 「緑」とポエムの「フラットさ」 083

 ▪「月刊髙層住宅」を読む
 ▪一九六〇年代の特徴
 ▪「緑」の「観葉植物化」
 ▪説明しすぎるマンションポエム
 ▪アイテム化する「日本」
 ▪ポエムにおける主客関係
 ▪「ほんとに優秀な人は」
 ▪戦後住宅政策の画一性
 |コラム| 「城」とワーカホリック礼賛 106
 
4 恋愛とポピュラーソング、結婚とマンションポエム 112

 ▪柏のラブソング
 ▪ポピュラーミュージックゆかりの地
 ▪「イエ」から脱却しポエムが召喚される 
 ▪「入居記念日」の誕生

5 マンションポエムに残るバブル 119

 ▪「男は、こうありたいね。」
 ▪マンションポエムアニメ
 ▪マンションを買えば、娘さんと恋人同士になれますよ  
 ▪「ファミリーの一日」に見るジェンダーバイアス
 ▪マンション口コミ掲示板の地獄絵図
 ▪クイーンでもマダムでもなく「プリンセス」
 |コラム| 横浜、湘南、アンダルシア 131
  ・夫婦間の郷土愛問題  
  ・戸塚はどこへ行こうとしているのか
  ・「その横浜は、本物か。」


第三章 マンションポエムと鉄道

1 吊革につかまって都市を把握する 142

 ▪同心円メソッド
 ▪3・11首都圏「帰宅ログ」
 ▪鉄道依存性方向音痴
 ▪中央線は「方向音痴」
 ▪人間はどうしようもなく方向音痴
 ▪都市をダイアグラムとして認識する
 ▪川の代わりの皇居
 ▪「われわれには時だけが残された」
 |コラム| 金沢は「へ」、富山は「が」 157
 
2 東京は「田んぼ」 161

 ▪路線図界の問題児
 ▪東京の地下にはパリが広がっている
 ▪成熟した都市はストリートでできている
 ▪NYの地下鉄の浅さ
 ▪家康の「帰宅困難」対策
 |コラム| 地名のポエム化 168
  ・恐ろしい忖度
  ・「奏の杜」問題
 
3 どこまで東京? 174

 ▪原木中山は日本橋の「飛び地」
 ▪「瞬間環境転換装置」
 ▪「都心」を謳う苦心
 ▪定義とイメージのズレ
 ▪「どこまで東京?」 
 ▪せたがやたがやせ
 ▪イメージの東京、その千差万別
 ▪各線の集計結果
 ▪川を渡る狼
 ▪なぜ地名はまとまっているのか
 ▪「東京」の外は北海道
 ▪千葉っ子、無駄にシビア
 ▪真の敵は神奈川
 ▪「東京のおじさん」
 ▪住めば東京(みやこ)
 |コラム|AIはマンションポエムを謳えるか 216
 
4 マンションポエムは「電車住宅」を目指す 222

 ▪世界征服系ポエム
 ▪ポエム大航海時代
 ▪鉄道を「住まい」の一部として売る
 ▪実現していた「電車住宅」
 |コラム| 大阪・京阪線沿線のポエムキャラ 230
 |コラム| マンションポエム分析から見る東西比較 236
  ・首都圏には「歴史」がなく、関西には「緑」がない
  ・関西の「地」、首都圏の「街」


第四章 垂直に伸びた郊外
 
1 聳え立つ「裏面」 244
 ▪三万階建てのタワーマンション
 ▪工法・構造の時代
 ▪居室の裏側
 ▪裏面から都市を見る
 ▪「福音」としての眺望
 ▪「装飾」としてのマンションポエム
 
2 垂直に伸びた郊外 252
 ▪構造を持たない「ヤドリギ物件」
 ▪鉄道高架を縦にするとマンションになる
 ▪閑静な住宅街を都心に出現させる
 ▪垂直のオアシス
 ▪縦の洞窟
 
3 武蔵小杉のタワーマンションに住む鴨長明 263
 ▪垂直に立ち上がった台地の傾斜
 ▪一二一二年の「郊外文学」
 ▪分譲へのアンチテーゼ
 |コラム| 不思議なエレベーター 270
  ・街を「縦割り」にする鉄道
  ・「最寄り駅」という「階」
 
4 超高層住宅住民への「怖れ」 274
 ▪「土から離れては生きられない」
 ▪現代の「異常な」郊外文学
 ▪郊外からタワーマンションへ
 ▪マンション屋上の浄水場
 ▪死から住民間の格差やいじめへ
 ▪『家族ゲーム』と高層団地
 ▪社会問題をあぶり出す「高さ」
 ▪高層物件「災害」物語の元祖
 ▪バベルの塔とWTC
 ▪「ホテルライク」による「怖れ」の緩和
 |コラム| 超高層の「上から目線」が嫌われる時代 289
  ・叩けば誇りが出る
  ・自慢げな「憧憬」「羨望」
  ・SNS的「感じのよさ」へ
 
5 ポエムが隠す「うたかた性」 300
 ▪商品化した住宅
 ▪国家経済の詩
 ▪災害と住宅論
 ▪コロナ禍のマンションポエム
 ▪再び・マンションポエムは何を隠しているか
 |コラム| 京都の観光ポエムと歴史のアイテム化 308
  ・東京はせいぜい江戸時代
  ・京都の千年モノポエム
  ・寝殿造りのマンション  
  ・「是非もなし」
  ・観光ガイドとマンションポエム 
  ・投資物件の台頭と観光型ポエム 
  ・歴史のアイテム化
 
6「世界は自由に想像できる。」 323
 ▪作り話のマンションポエム
 ▪フィクションの「異物」
 ▪歴史のNIMBY
 ▪「良い感じの歴史」を選ぶ
 ▪「東京湾に切り取られた欠損部」
 ▪「海の周囲に厳かな埒を結うのだ」
 ▪マンションポエムの「晴海化」

あとがき 341

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