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4月22日(金)

「磯マーケットフェス」の準備でやって来られた宮田珠己さんに諸々お預かりしていたグッズをお返しす。「磯マーケットフェス」というのは海の文化祭だそうで、5月3日、4日に「アーツ千代田3331・B104」で開催されるらしい。入場には事前予約が必要なそうなので、こちらよりどうぞ。

 午後、追加注文いただいた大竹聡『ずぶ六の四季』を丸善丸の内本店さんに納品する。


★★★★★★★

「本屋大賞ができるまで」(9)


【高頭佐和子(当時;青山ブックセンター本店、現在:丸善丸の内本店)の回想】

 あの頃の私は追い詰められていました。本屋の仕事は好きだ。続けたい。しかし本はどんどん売れなくなっている。会社は下っ端の私にもわかるレベルに経営難。どんどん人が辞めていく。自分も脱出すべき? しかしうまく逃げたとしても、無資格無能でか弱い私が、この先他の職業でやっていけるのか。まあ、そんな感じです。

 そこで私がたどり着いたのは、「もっと本が売れれば良い」というシンプルな考えでした。本は面白い。それは間違いないので、そのことをみんなが知ってくれれば、ガンガン売れて将来不安からも解放されるはず、と思ったんですよね。

 今当時の私に言ってやりたいのは「あんたって頭の中花畑?」ってことなんだけど、ブーブー文句だけ言ってるより、書店員として売り場でやってることを、みんなで協力してもっと大きな何かにできたら面白いじゃんっていう考えは間違いではなかった気がします。

 どこかの出版社の会合の時にトイレで化粧直しをしながら、ブックファーストの林さんと「書店員のみんなで賞みたいなの、できたらいいね」という思いつきを話して、その後杉江さんに『本の雑誌』で1ページなんかやらせてよ、みたいな話をしました。しばらくして杉江さんから「例の話やろうと思うので、会議に来てください」と言われたものの、なぜ博報堂みたいなちゃんとした会社で華やかな仕事をしている人たちが、狭い売り場で本を売ってる地味な人間たちと何かやろうとしているのか、よくわからないままに参加したんですよ。

 飲み会の延長のような会議でしたが、全員が自分の考えや経験、疑問を遠慮なくストレートに出してきました。何も決まっていないところから、書店員なら誰でも投票に参加できるというたくさんの人を巻き込むシステムにみんなの気持ちがまとまったのは、そこにいた全員が「なんとかしたい」と言う気持ちを持っていたからなのではないでしょうか。日々店頭で感じている「こんなに面白いから、もっとたくさんの人に手に取ってもらいたいなあ」という気持ちを、「売りたい」というシンプルな言葉にして入れられたのも良かったと思います。

「本屋大賞」ってホワイトボードに書いたのは、誰だったかなあ。私だったような気もします。書店員大賞とか本屋さん大賞とかいろんな案が出た記憶がありますが、私としては「本屋」っていうのが一番しっくりくるんですよ。年配の方から赤ちゃんまで気軽に立ち寄れる親しみやすいイメージですよね。なのでめちゃめちゃ嬉しかったです。

 その後いろいろ大変なことがあり、本屋を辞めるチャンスは何回もやってきました。あの会議がなかったら、違う人生を歩んでたかもしれないなあ、と時々思います。

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