12月24日(水)赤神諒『夏鶯』(集英社)

  • 夏鶯
  • 『夏鶯』
    赤神 諒
    集英社
    2,530円(税込)
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あの、たとえ口を押さえてもしゃべり続けるであろう多弁で雄弁なPOP王こと内田剛さんが、感に堪えない様子で「いいんですよねええ」と一言いったきり言葉を失っていた赤神諒『夏鶯』(集英社)。

その様子が気になり読み始めたところ、最近では飲み会で出版界の明石家さんまとも呼ばれる私も無言になって、内田さんのようにただただ読了後、本を撫でさすってしまった。

本をおすすめするのには言葉が必要なんだけれど、本当にすごい本を読んだときには言葉を失ってしまうものなのだ。

しかし言葉を失う前には、何度も何度も何度も激しく涙を流すことになるので、この本を読む前にはティッシュペーパーかフェイスタオルを傍に用意しておくことをおすすめする。

まず冒頭で幕末の1868年に吉備藩の行列をフランス人が横切り発砲事件となった「三宮事変」が記される。そしてすぐに時代は25年ほどさかのぼり、吉備藩金谷村の一人の俊英が登場する。その俊英は砲術家の家督を継ぐ藩士の次男・滝田蓮三郎といい、文武共に頭ひとつどころかいくつも抜きに出ており、末は吉備藩どころか日本を支える存在になるだろうとめされている。

読者は当然ここで気づくのだ。冒頭に記された吉備藩の行列を率いていたのが滝田とあったことに──。

それ以上のことを語ってはこの本を読む喜びを奪ってしまうので一切ストーリーには触れない。とにかく何も知らずに読み、どうして? なんで? もうやめて!とあなたも物語の濁流に飲み込まれてほしい。

それにしてもを『夏鶯』を読まずして2025年のベストを語っていた自分の愚かさを大いに恥じたい。申し訳ございませんでしたと深く首を垂れる。誰に? 読者に。著者に。そしてやっぱり北上次郎さんに。北上さんだったら速攻で手にして大絶賛していたことだろう。

そろそろ仕事納めとなろうかと思うが、帰りに本屋さんに寄ってぜひ『夏鶯』買って帰ってほしい。

この本が読めたことで、2025年がいい年だったと思えるはずだ。

12月23日(火)増島拓哉『飢える骸』(角川書店)

  • 飢える骸
  • 『飢える骸』
    増島 拓哉
    KADOKAWA
    2,310円(税込)
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タミフルを飲んだらそこは全快だった。

タミフルの効果が抜群で、熱は一気に下がり35.5度となっていた。咳も鼻水も出ず、食欲もあり、全身どこにもインフルエンザを感じない。

しかしわが体内からウイルスは排出されているらしいので、引き続き会社を休み、寝て過ごす。

増島拓哉『飢える骸』(角川書店)を読了。

全身の血が沸騰する。魂が焼き焦げる。

前作『路、爆ぜる』が「北上次郎「面白小説」大賞」の候補となった増島拓哉による超フルパワーの極道小説だ。

ヤクザ同士の内部抗争から血で血を洗う戦いが繰り広げられ、黒川博行の小説のような軽快さでページがめくれ、北方謙三の小説を読み終えたときのような興奮に包まれる。

なぜそんなことに私の血をたぎらせるのかといえば、それは不純の中の純粋性に憧れるからだろう。

「三下でも、俺は極道です。」

私はこういう小説を読みたかったのだ。熱い血潮がたぎって仕方ない。

いったい最後まで誰が生き残っていたのか? 読み終えた後、登場人物を指折り数えてしまったが、是非とも生き残った人間たちによる続編を書いて欲しい。切に願う。

また熱が上がりそうだけれど、興奮続く中すぐに再読する。

12月22日(月)人生初インフルエンザ

いくらか回復した気もするが、それもバファリンの影響だろう。熱を測るとやはり37.6度ある。今のところ予防接種を受けている母親はなんともないので、とりあえず施設に送り出す。送り出さざるを得ない。

御茶ノ水までどうにかたどりつき出版健保に出頭。検査をしてもらうと、やはり「インフルエンザA型」。人生初のインフルエンザ罹患なのだった。

熱は38度あり、だるい。会社に連絡をいれ、マスク着用の上、話しかけないように注意し、明日の校了の準備と本の雑誌2月号の発注をして、パソコンをもってすぐさま退散する。

自宅に帰り、自室にこもり、タミフルを飲んで寝る。

12月21日(日)発熱

起きた瞬間に何かおかしい感じ。身体の中で何か蠢いている気がする。

そうこうしているうちにダルくなり、身体の節々が痛くなる。熱を測ると37.6度だった。

先週金曜日に息子がインフルエンザになっており、自室で隔離していたのだけれど、その数日前に一緒に風呂に入って浦和のチャントを歌っていたりしたのだから、うつったのだろう。

とにかく母親になるべく近づかぬようにして過ごす。

夜中に全身に倦怠感と悪寒が襲ってきたので、薬箱にあった賞味期限切れのバファリンを飲む。

12月20日(土)転ばないこと

曇り時々雨。介護施設に母親を迎えにいき、週末実家介護。

月2回お願いしている訪問診療のお医者さんが母親の各種数値を見て、「これなら100歳まで生きれるね!」と笑顔を浮かべている。

ふたりは笑っているけれど、私は一切笑えない。

お医者さんは「とにかく転ばないこと」と母親に言い聞かせ帰っていった。

午後、母親の親友である伊藤さんがやってきて、よもやま話。

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