3月24日(火)背中

会社を休み、母親の介護施設を訪問する。

いつもショートステイでお世話になっている施設の2階がサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)になっており、部屋が空いたのでどうかと声をかけていただいたのだ。

部屋は申し分ないのだけれど、サ高住というのは基本自分のことは自分でするわけで、左半身に麻痺が残る母親にそれができるのか皆目検討がつかない。

日々母親を見ている施設の人は大丈夫でしょうと言う。しかし週末私が世話しているときはベッドから起きるのも手助けしているのであり、もしかして私は手を添え過ぎているということだろうか。

見学を終え、ケアマネジャーさんに連絡をするとすぐに施設を訪問してくれるという。しばらくすると感想と今後のケアプランの提案などもしていただく。

今日は妻も休んで施設見学に同席してくれたのだった。ひとりでないことがこんなに心強いと感じたことはない。しかし、決断は自分がしなければならない。

「自分の家が一番」という母親の言葉、「自宅で面倒みれないの?」という近所の人たちの声、「これからも週末よろしくね」という母親の友達からのプレッシャー、そして「杉江さん、まだ介護続けてるの? 偉すぎるよ」という励まし、いろんな声が頭の中をぐるぐるする。

西の空が赤く染まる頃、ランニングをしていると、仕事場から帰ってくる息子とばったり会う。声をかけ、言葉を交わし、自転車の息子は私を残して、一足先に自宅に向かう。

夕日に包まれるその背中は、小さくなっていくはずなのに、私にはなぜかどんどん大きくなっていくように見えた。

3月23日(月)積み上がるゲラ

春日部から出社。電車には袴姿の女の子がちらほら見える。卒業式の季節。

私の前にはゲラが積み上がっている。ひとつは入稿寸前のゲラ。もうひとつはこれから著者に送る初校ゲラ。さらに著者から宅急便が届き、そこには再校を確認し朱字のゲラが入っていた。実はもうひとつ再校ゲラが鞄に入ってあり、通勤中に目を通しながら帯コピーを考えていた。

どうしてこうなるかというと、人に会うと本が生まれるからだ。

夜、伊野尾書店さんにて図書カード三万円お買い物の取材に立ち会う。

3月22日(日)本屋さんで本を買う理由

なぜネット書店を使わず、本屋さんで本を買っているかというと、いつでも本が買える街で働いているからとか、いつでも本屋さんにいける仕事に就いているからではなくて、本屋さんで買った本には、買った時の記憶が宿るからだ。

お店に入る時の高揚した気分、いざ棚を前にしたときの目移りする気持ち、そして目当ての本を見つけ胸躍らせレジに持っていったときの店主の表情。そうしたものが本屋さんで買った本には残る。

読み終えて自分の書棚に差した本や未読のまま床に積み上げた本の背表紙を見る度、その本を購入したときのことを思い出せるのが本屋さんで買った本だ。

54歳の私の人生はきっと、これまで生きてきたよりもこれから生きる時間のほうが短い。動ける距離もどんどん狭くなるだろうし、本もそれほど読めなくなるだろう。

そうしたとき背表紙を眺めて、その本を買ったときを思い出す。それは一冊の本を読み終えるくらい豊かなものを運んできてくれるはずだ。

3月21日(土)またね

二週間ぶりに週末実家介護。

娘もついてきて、昼過ぎに妻と帰る時、「ババ、またね」と手を振っていた。

娘にとって祖母とはどういう存在なんだろうか。なにか思い出があるのだろうか。死んだら悲しいのだろうか。

午後、5ヶ月ぶりに前川さんのおばさんがやってくる。春とともに訪問再開のよう。

3月20日(金・祝)ROTH BART BARON

渋谷のO-EASTにて、ROTH BART BARONのライブ。11月に草月ホールで見たのはストリングス編成で、本日はフォーン隊が入ったバンド編成のライブ。

この何年か、いや3年ほどなんだが、わが師である目黒考二さんが亡くなり、その3ヶ月後に父親が死に、さらに1か月半後に母親が脳梗塞で倒れ、そして相続や介護でいろいろとあり、たぶん私はかなりつらい状態だったと思う。

それを「たぶん」と言えるのは、いつも近くにROTH BART BARONの音楽があったから。

通勤電車の中も、営業に出向くときも、母親の介護で実家のベッドで眠れぬ夜を過ごしているときも、いつもROTH BART BARONの音楽を聴いていた。

ROTHの曲は、いわゆる応援ソングなんてものではない。歌詞も抽象的で、がんばれとか今の君でいいみたいなメッセージはひとつもない。それでもROTHの奏でる音楽を聴いているとすごく元気になれる。明日も生きていこうと思える。

それがコード進行のせいなのか、リズムのおかげなのか、声の力なのか、楽曲の力なのかわからない。きっとそのすべてなのだろうが、ただただ多幸感に包まれ、音楽という言葉どおり、楽しい音に包まれ、祝福されているような気分になる。

今日はそんな大切なROTH BART BARONのライブだった。ROTH BART BARONのライブはいつも過去最高を超えてくるのだけれど今日は凄すぎた。どの曲もしびれるようなアレンジがされていて、ドキドキのしっぱなしだった。

また明日も生きよう。楽しく生きよう。

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