4月26日(土)コーラス
朝、週末介護で実家に行き、庭を掃除していたら、家の前を歩いて通り過ぎて行ったおばあさんが、戻ってきて声をかけてきた。
「すみません。私、コーロ桐の花でお母さまと一緒にコーラスやっていた大西と申します。杉江さんにはすごくお世話になって、旅行に行ったりもしたんですよ」
コーロ桐の花というのは母親が立ち上げた合唱団なのだが、それは私が中学生くらいの時の話だった。
大西さんと名乗るおばあさんは、二つ先の駅に住んでいたのだけれど旦那さんを亡くし、ひとりで家で過ごすのも心配で、最近この近くのサービス付き高齢者向け住宅に引っ越してきたという。
その施設は出歩くのは自由なのでこの辺りを毎日散歩しているそうで、シャッターが閉まった我が家を見ては、私の母親のことを心配していたのだという。
ボケはじめている母親に会わせたところで噛み合わない会話になったりしないか不安に思いつつ、家に上がってもらった。
すると顔を合わせるなり、ふたりは40年以上前のコーラスの話を、時間を忘れて話し出したのだった。
「いろんな歌をうたってねえ。紫のドレス着てさ。グレーのドレスも素敵だったわよね。本当に、いい思い出。私、春日部の文化会館で団員募集のポスターを見て連絡したのよ。ただ練習する公民館が遠かったでしょう。初めて見学に行った日のこと私一生忘れないの。杉江さんと中原さんが武里駅で待っててくれたの。今でもあの光景、思い出すわよ」
1時間ほど話して帰って行った大西さんは帽子を忘れた。
施設まで届けに行こうかと思ったがやめた。忘れ物があった方がまた来やすいだろう。