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2019年12月 積ん読すす払い号 No.438

 怪奇小説からミステリー、時代小説まで、アンソロジーが花盛りの昨今だが、これまでにアンソロジーを500冊弱作ってきた日下三蔵氏によると、収入より本を買ったり雑誌を集めたりする経費のほうがかかってしまい税務署から同情されることもしばしばらしい。では、アンソロジストは何を歓びにアンソロジーを編んでいるのか! というわけで、本の雑誌12月の特集は「アンソロジストを目指せ!」。日下三蔵と藤原編集室が歓びと哀しみを大いに語るアンソロジスト対談から、怪奇幻想アンソロジスト東雅夫インタビュー、おすすめアンソロジー10選に三本立て夢のアンソロジー、そして「決戦!」シリーズ担当者におじさん一号が斬り捨てられる討ち入り(失敗)取材まで、アンソロジーの醍醐味が満載の21ページ。幻想怪奇小説好きにもミステリーマニアにも超お役立ちの年末スペシャル特集だ!

 新刊めったくたガイドは小財満が悲しきギャングの逃避行『11月に去りし者』がいいぞ!とい激賞すれば、林さかなはリアルでへんてこなエトガル・ケレットの短編集で疲れた頭をリフレッシュ。大森望が本年度ベストSF上位候補、小川哲『嘘と正典』が出た!とぶち上げれば、千街晶之は米澤穂信『Iの悲劇』の異常すぎる動機に驚愕! 大塚真祐子が性と生を問い直す村田沙耶香『生命式』にひきずり込まれたかと思うと、仲野徹はJRと革マル派の関係に迫る『トラジャ』のめり込んで、いやあ、すごい! そして北上次郎はダメ男小説の大本命が出たぞ!と断言。ダメ男小説を愛する同好の士には絶対のおすすめ、というその本はさあ、なにか。54ページで確認してくれぃ!

 今月の図書カード三万円使い放題!には阿部智里が登場。予算オーバーもなんのその、紀伊國屋書店横浜店の棚を満喫して買った本は20冊。なにを買ったかは35ページだ。そして今月のゲストは林百合花。啓林堂書店奈良店の書店員が奈良のすごさと楽しさを強力プッシュ。さあ、奈良に行こう! 読み物作家ガイドは船戸与一。『猛き箱舟』の担当編集者・山田裕樹が「叛史」を書き尽くした巨星の10冊を厳選。『非合法員』が入っていないのはなぜか、要チェックだ。さらに要チェックは毎月戦々恐々の黒い昼食会。なんと「驚愕の大ネタが登場!?」。おお、大ネタってなんだ? 気になる人は80ページに急げ! とかなんとか言ってるうちに2019年もあと一か月。コタツと本の雑誌12月号でアンソロジー三昧といこう!

目次

本棚が見たい!

12月の書店 ポルベニールブックストア/12月の本棚 渡辺英樹
新旧いろいろ面白本/世界でもっとも危険な地帯の旅 椎名 誠
図書カード三万円使い放題!/予算オーバーなんか怖くない! 阿部智里
SF音痴が行くSF古典宇宙の旅/『夏への扉』はビートルズである!? 高野秀行
憧れの住む東京へ 赤瀬川原平⑤/そして神保町 岡崎武志 

特集:アンソロジストを目指せ!

対談/発掘の面白さと布教活動が醍醐味だ! 日下三蔵・藤原編集室 
東雅夫インタビュー/原稿用紙千枚の註を受けてみろ! 牧原勝志 
キノコあり猫あり誤植ありの異色アンソロジー集合! 大矢博子 
私の夢のアンソロジー! 柿沼瑛子/藤代三郎/神谷竜介 
おじさん一号、「決戦!」の編集者に会う!

一私小説書きの日乗/堅忍の章(十六) 西村賢太
生き残れ!燃える作家年代記/著者手書きPOP濫觴の煩悶でござる 鈴木輝一郎
黒い昼食会/驚愕の大ネタが登場!?
ユーカリの木の蔭で/和田誠さん 北村 薫

新刊めったくたガイド

哀しきギャングの逃避行『11月に去りし者』がいいぞ! 小財 満
リアルでへんてこなエトガル・ケレットの短編集 林 さかな
本年度ベストSF上位候補 小川哲『嘘と正典』が出た! 大森 望
米澤穂信『Iの悲劇』の異常すぎる動機に驚愕! 千街晶之
性と生を問い直す村田沙耶香『生命式』 大塚真祐子
JRと革マル派の関係に迫る『トラジャ』にのめり込む! 仲野 徹
ダメ男小説の大本命が出たぞ! 北上次郎

「新宿鮫」八年ぶりの新刊『暗約領域』待望の登場! 宇田川拓也
都筑道夫『紙の罠』に気をつけろ! 内田 剛
謎だらけの『黄金の国を求めて』 坂上友紀
いま最注目の作家ド・ボダールの短篇集『茶匠と探偵』 山岸真
可愛すぎて見守りたい 岡部 愛
がっつり古本が並ぶグラノーラのお店 小山力也
ブラック・メタルから宇宙の哲学へ べつやくれい
創刊95年『子供の科学』で未来は明るいぞ! 原カントくん

奈良はすごいぞ楽しいぞ 林 百合花
私がロト7に当たるまで/オリジナル商品開発! 宮田珠己
モーター文学のススメ/頑固者が作ったヒーロー 速水健朗
マルジナリアでつかまえて/もしフェルマーがKindleを使ったら 山本貴光
坪内祐三の読書日記/ジャパン女子の謎がとけました 坪内祐三
連続的SF話/シャロン・テートの写真 鏡 明
南の話/とびきり絵本の十五冊 青山 南
そばですよ/上野と新宿と渋谷はそばで繋がっていた 平松洋子
鬼花──鬼刑事・花篤好美/オンマ イズ オーバー(4) 中場利一
少年と猫の歩く道 円城 塔  
悪そうな男 江部拓弥 
いつかのピクニックが、ありありと立ち上がる 石川美南 
史上最も人を喰らった虎 風野春樹 
ホリイのゆるーく調査/大草原の家は大きいか小さいか 堀井憲一郎
神保町物語/万年筆に酔いしれて 沢野ひとし
船戸与一の10冊/「叛史」を書き尽くした巨星 山田裕樹

続・棒パン日常/漂着本 穂村 弘 
三角窓口/「敗北」した者はなぜ敗れて北へいくのか? 他
今月の社食 橋本 恭 

今月書いた人
今月本の雑誌に遊びに来た人 
掲載図書索引
後記 

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