『残酷依存症』櫛木理宇

●今回の書評担当者●山下書店世田谷店 漆原香織

2022年ももうすぐ終わりですね。年越しの準備はお済みでしょうか?「さぁ、読書三昧するぞ」という予定の方も多いのではないでしょうか?
今年最後にご紹介させていただく本は、櫛木理宇さんの『残酷依存症』です。

2022年、『死刑にいたる病』映画化、『鵜頭川村事件』ドラマ化と大活躍された櫛木理宇さん。
刊行当初、「櫛木さんでこのタイトル、面白いの一択でしょ!」と狂喜乱舞しました。
タイトル通り残酷レベルは『死刑にいたる病』を上回っているけれど、それは鬼畜の狂気によるものなのか...。

永仁大学3年生の乾渉太、瀬尾航平、阿久津匠は中等部1年からの長い付き合いであり、加入しているイベントサークル「FESTA」でもいいトリオと評判だった。サークル名義で借りている借家に下見に行った三人。酒の買い出しに向かった渉太は何者かに襲われる。気づいた時、自身の足の指4本は失われ、パンツ1枚で拘束された姿だった。他の2人は? 犯人の目的は?
また、時を同じくして他の事件も並行して起こっていた。そのうち一件で死体が発見され、捜査が進むにつれ、人間関係が露わになって見えてきたものは...。

捜査する巡査の言葉「どっちが正義か」の意味が心に響くこの作品を、怖いと感じるか救いと感じるか。それはこの作品で題材となった問題だけでなく、今までの自分全てに重ねられると思います。

そしてこの作品、実は依存症シリーズ2作目で『殺人依存症』という前作があります。がっつりとした続きものではないので、前作を読んでなくてももちろん楽しめます。(実際、私は前作を読むタイミングを逃し、タイトルから今作を先に読みましたが十分に楽しめ、前作を読まねば!と思いました)

そして、前作を読んだが今作をまだ読んでないという方は、新生・浜真千代にご期待ください。彼女がさらなる進化を遂げてやって来ます。

では、皆さまよいお年をお迎えください!!
また来年もよろしくお願いします。

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山下書店世田谷店 漆原香織
山下書店世田谷店 漆原香織
『推し活』という言葉が出来る◯十年前より、推し活人生を送っている人。趣味は読書と旅行(推し活は生き様なので趣味ではない)。旅行好きが高じてここ約10年ほど海外添乗員を生業にしていたが、コロナにより強制終了。山下書店世田谷店に拾っていただき本に埋もれる幸せな日々の現在に至る。文芸書とコミックを担当。