●担当者●ジュンク堂書店池袋本店 小海裕美

2023年5月4日更新

『新装版 ロマン』ウラジーミル・ソローキン

 いよっ!でました!  というのが、今回紹介する『新装版 ロマン』ウラジーミル・ソローキン(国書刊行会)の刊行を知ったときと、本書の後半を読んだ感想だ。  大人なので、人前でそんなことはしないが、気持... 記事を見る »
2023年4月6日更新

『他人の家』ソン・ウォンピョン

 不惑を超えて、いろいろなことが大変になってきた。 「大変」な時というのは、一つだけではなく様々な問題が起こる。ひとつひとつの出来事はありふれていて、大惨事や天変地異レベルではないものの、当事者にとっ... 記事を見る »
2023年3月2日更新

『スティーブ&ボニー 砂漠のゲンシリョクムラ・イン・アメリカ』安東量子

 例えるならヘレン・ケラーが水を初めて言葉として捉えて「ウォーター」と言ったという逸話のように、ある言葉がすとんと腑に落ちる瞬間があった。  それは、今回紹介する『スティーブ&ボニー 砂漠のゲンシリョ... 記事を見る »
2023年2月2日更新

『ババウ』ディーノ・ブッツァーティ

 初めて大人向けの本を読んだ時の衝撃を忘れられない。  いわゆる「ダメな大人」や「無為に生きるさま」が物語の主役になれるのだという驚き。一冊を費やして失敗を描いたりする。  それまでは、失敗をしたり狡... 記事を見る »
2023年1月5日更新

『首相が撃たれた日に』ウズィ・ヴァイル

 小説を読んで心を射止められたことはあるだろうか。  私はある。前回はエトガル・ケレットの短編で、友人の深い孤独が伝わる一編に胸がえぐられるようだった。そんなふうに心にとめた作品は、時がたっても読んだ... 記事を見る »
2022年12月1日更新

『金魚 いろ×かたち謎解き図鑑』大森義裕

 先日、ノンフィクション本大賞の受賞式があった。『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(集英社インターナショナル)で受賞された川内有緒さんのスピーチがとても素晴らしかった。人との出会いは、効能なん... 記事を見る »
2022年11月3日更新

『無の国の門』サマル・ヤズベク

 文学を分けるとき、その基準は出身地なのか、現在の居住地なのか、言語なのか民族なのか悩む。地図を見ても、その場所がどの国に属しているのか乏しい知識では分からなかったりする。迷うような地域は政治的にも複... 記事を見る »
2022年10月6日更新

『王朝奇談集』須永朝彦

 書店で扱う書籍には古今東西多種多様な情報や知識が詰め込まれている。書籍を記した著者や編集者、それを店頭に勧めてくれる出版社営業、そして書籍を求めるお客様など一冊の本が手から手へと渡っていくリレーの襷... 記事を見る »
2022年9月1日更新

『異常アノマリー』エルヴェ・ル・テリエ

 四歳のとき、京都駅でだったと思う。  家族で外出した帰り、体が重いと思いながら母親の後を歩いていた。その時背の高いモヒカンの一団が目の前を横切り、目を奪われた。パンクな格好を見るのは初めてだった。し... 記事を見る »
2022年8月4日更新

『雌犬』ピラール・キンタナ

 一冊の本がここにある。  束、文字の大きさ、行間など、目で見て読むのにどれくらいかかりそうかざっと見積もることはできる。しかし、内容は読んでみないと判らない。平庸で読みやすいと読んでいたら、小説の世... 記事を見る »
2022年7月7日更新

『プリズン・サークル』坂上香

 SNSや新聞など情報は毎日発信されている。書籍もその一つだ。  書籍をジャンルに分け、分類に則った文脈で書棚に配架する棚づくりは、書店員の重要な仕事だ。棚づくりは、書籍の内容だけでなく、それを必要と... 記事を見る »
2022年6月2日更新

『年年歳歳』ファン・ジョンウン

 書店の店頭に立っていると、思わぬ人生の一面を見てしまうことがある。  随分前になるが、日曜の朝一番に受けた電話は、夫に浮気されたやり場のない気持ちの持ちようを何とかしてくれる書籍を探して欲しいという... 記事を見る »
2022年5月5日更新

『ピンク色なんかこわくない』伊藤朱里

 最近洋服を買う際ピンクを選ぶことが多い。生活に彩が欲しいと思う気持ちと、「ピンク」に対する自分の拘りがなくなったのだろう。もっとずっと若かった時、同年代の友達と「ピンク」を受け入れる難しさについて話... 記事を見る »
2022年4月15日更新

『生を祝う』李琴峰

 町でマタニティマークを見かけるとはっとする。そして自分でも説明できないような気分になる。  私の妊娠はいつも困難続きで不安が絶えなかった。最後の妊娠では、初期と後期は絶対安静を言い渡され、切迫早産で... 記事を見る »
2022年3月3日更新

『緑の天幕』リュドミラ・ウリツカヤ

 もう10年以上前になる。六本木で、「戦争と平和」の映画を観た。途中休憩をはさみながら、上映が終わるまで8時間くらいかかったと思う。章の始まりには、荘厳な音楽と流れる雲が延々と映され、何となく背筋を伸... 記事を見る »
2022年2月3日更新

『台北プライベートアイ』紀蔚然

 この2年ほど、異常な事態の中にいる。  最初のパニックが治まり、1年が過ぎると、どうやらこれは長期戦らしいということになり、以前とは違う日常を送っている。  そんな中、読んだり耳にしたりするのは、弱... 記事を見る »
2022年1月6日更新

『眠りの航路』呉明益

 一冊の本を読んだことをきっかけに、様々な読書の経験に繋がることがある。  翻訳文学の場合、一冊、また一冊と読書を重ねると、過去の読書と繋がる瞬間があって、自分なりの世界地図が脳内に作成される。行った... 記事を見る »
2021年12月2日更新

『蛇の言葉を話した男』アンドルス・キヴィラフク

 何のきっかけか忘れたが、昔上司が「人生の岐路って言うけど、その時は分らなくて、後からそうだったって気付くのよね」とふと言った。その時はそんなものかと聞き流したものの、何か一歩を踏み出そうという局面で... 記事を見る »
ジュンク堂書店池袋本店 小海裕美
ジュンク堂書店池袋本店 小海裕美
東京生まれ。2001年ジュンク堂書店に入社。自分は読書好きだと思っていたが、上司に読書の手引きをして貰い、読んでない本の多さに愕然とする。以来読書傾向でも自分探し中。この夏文芸書から理工書担当へ異動し、更に「本」の多種多様さを実感する日々。